[67]寮生活?笑い話?

2019年3月21日

第67回
■寮生活?笑い話?
ある日女中から「一寸お使いに行って来て頂戴」と云われました。市場まで歩いて15分位掛かります。「買い物は、玉葱5銭と豚コマ肉を15銭ね」と云って20銭受け取りました。
出かけようとしていたら、直ぐ下の妹が「お兄ちゃんあたしも行く」と云うので連れて行くことにしました。妹は7才でした。そして五、六分行った頃、急に私が腹が痛くなって急いで家に帰らなければならなくなりました。そこで妹に「肉を15銭と玉葱を5銭だよ」と云って「直ぐに追いかけて行くからね」と云って妹を先に一人で行かせました。
所が急いで妹の後を駆け足で追いましたが、5分くらい走った所へ、遠くの方から大きな風呂敷包みを抱えた妹に出逢いました。「お兄ちゃん、買い物してきたよ」と云うので、「どれどれ」と風呂敷の中を見てびっくり・・風呂敷の中は玉葱が一杯・・肉はほんの一握り程度でしたので、聞いたら「玉葱15銭でお肉は5銭でしょ」・・だって。なんと買い物は反対だったのです。仕方がないので「取り替えて貰ってこよう」と云って妹と一緒に八百屋と肉屋に取り替えて貰いました。今でもこれは笑い話です。
此の「出洲海岸」漁師の「ハマグリ」や「アサリ」の養殖場であつたらしく、家族連れでみんな潮干狩りに来ていました。漁師に「ハマグリ」は青の網袋、「アサリ」赤の網袋を買わなくては成りません。その青網袋一杯に「ハマグリ」を取ることが出来、赤網袋は「アサリ」を一杯まで取ることが出来ます。青は20銭、赤は10銭だったと思います。
漁師のおっかない顔をした人が、常に巡回して監視しています。無断で取ると直ぐに没収されてしまいますが、昼間は何しろ遠浅で大人のヒザくらいしか水がありませんから、足首に手拭いを縛って、それに「ハマグリ」を入れて引きずって歩いている人をちょくちょく見かけましたが、専門家の漁師の監視員の目をごまかす事は大抵出来ずに捕まってお目玉を食っている人も結構いました。
此の当時の「ハマグリ」は10cmもあるほどの大きなものでした。
私達は大抵昼間は家にいて、蓄音機をひっきりなしに掛けていました。小さな妹もいましたから、紙芝居付きのレコードが何枚かありました。おとぎ話をレコードで聞きながら、紙芝居の絵をめくって行くのです。名前は忘れましたが、当時のレコードは現在も持っています。
そして私は流行歌です。歌手「上原 敏」の唄う「妻恋道中」です。もうすり切れたようなSPレコードですが、これも当時のまま保存しています。此の歌を聴くと当時を思い出しますので、ここで歌詞を一番だけ書いて見ますね。
♪  好いた女房に 三下り半を
   投げて長脇差 永の旅
   怨むまいぞえ 俺らのことは
   またの浮世で 逢うまでは   ♪ 
例によって「股旅もの」ですが、10才の少年には意味など分かるはずがありませんが、上原 敏の名調子に乗ってすっかり覚えてしまいました。上原 敏は昭和19年にニューギニアに於いて35才で戦病死したそうです。
此の歌を聴くとき昭和12年の頃が思い出されます。
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 妻恋道中 / 橋幸夫
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