[220]立ち読み文化
立ち読みは文化であると同時に偉大なるマナー違反でもあります。本屋で立ち読みをしていると何気なく本屋の親父が近寄ってきてハタキをパタパタとやる光景は昭和の漫画には多く登場していました。それくらい馴染みのある行為、それが立ち読みであります。
立ち読みは現在の日本の法律では犯罪になりません。本の中身を読むことは情報の搾取にあたり無銭飲食と同様に考えられなくもありません。しかし、現在の日本の法律では盗む対象は「モノ」でなければならない、という決まりがあります。無銭飲食で窃取する食べ物は「モノ」ですから無銭飲食は犯罪になります。
本屋の場合は、本を自由に手に取る事ができ、しかも封がしていなければ中も閲覧可能です。ぱらぱらとめくっただけで情報の窃取として犯罪になったら怖くて本屋にはいけなくなってしまうでしょう。窃取はモノでなければならないというのはそれなりに理由があってのこと。そのおかげで現状では本を立ち読みするだけでは犯罪になりません。
しかし、最近カメラ付き携帯電話で本のページを写真取りする行為が問題になっています。本の中身を写真に撮るこの行為はデジタル万引きというそうです。やってはいけない行為であることは歴然ですが、残念ながら現状ではデジタル万引きについて取り締まる法律は整備されていません。
被害者の本屋さんとしてはどうしたらよいでしょうか。まず、デジタル万引きをされないように努力しなければなりません。さらに、デジタル万引きを目撃したら、それをやめさせることです。
客に向かってその行為をやめさせるということは勇気のいることかもしれません。しかしよく考えてみましょう。立ち読み後、その本を買ってくれるならば「客」ですから、立ち読みはなんら問題にはなりません。しかしカメラ付き携帯電話で本の中身を撮影する行為はイコールその本を買わずに済まそうという行為です。従ってその輩は「客」ではありません。さっさと追い出しましょう。
アメリカ人はこと商売に関して、今自分の目の前にいる人間が「客」なのか「客」でないのかを敏感に察して話をします。「客」は大事にしますが、「客」でない人は相手にしません。商売ならば当たり前の話です。しかし、日本人はお人好しなせいか、客か客でないかの判断をしない習性があるようです。客でなくてもいずれ客になってくれるのでは?という甘い観望もあります。客でない人は店に入るべからず。そういった毅然たる態度がそろそろ日本の企業にも求められるときが来ているのではないでしょうか。
なお、本屋でまだお金を払っていないのに、その本に書き込みすることも他人の財産を傷つける器物損壊にあたり、犯罪になります。では内容についてメモをとった場合はどうでしょう?メモをとるだけならば犯罪にはならないと思われます。ただし本屋の親父には睨まれること請け合いです。