[218]おひねりと投げ銭
おひねりとはその昔、舞台が終わった際に役者に対してご祝儀としてお金を投げたのが始まりのいわゆる投げ銭ですが、銭をそのまま裸で投げるのではなく、紙に包んで一ひねりして投げたので「おひねり」。良かった演技に対しての古典的なチップといえます。
初詣などで投げ銭をしたことがあれば分かりますが、銭はそのままですとなかなか投げにくい。しかしこれを紙に包むことで遠くまで飛ばすことができますし、コントロールもしやすい。また複数の銭を一緒に包むこともできます。さらに演技に感動した場合はより高額な紙幣を投げたくなる人もいたことでしょう。この場合は、中に小石をいれ、それを紙幣でひねって包んで投げればさらに役者が喜ぶ「おひねり」となります。
最近日本でも歩行者天国でおなじみの大道芸。これにもおひねりは付き物です。といってもこの場合は投げ銭といいますね。芸人の前に帽子がおいてあり、芸が良かったらその中に投げ銭します。この場合は紙に包まず、裸の小銭を投げ入れます。大道芸は世界中で行なわれていて観客の投げ銭は当たり前のように行なわれます。
ところが日本の場合は、こと大道芸に関してはなかなか投げ銭をしないという人種です。舞台に「おひねり」をした文化の有る人種とは思えません。ただ見はいけませんよ。大道芸を見たら心づけ程度で良いので投げ銭しましょう。これはマナーです。
ちなみに2003年大道芸ワールドカップ級の芸人の場合、一回のパフォーマンスで得る投げ銭は約2万円。パフォーマンスは1時間くらいですからかなり稼ぎます。観客が使う投げ銭は100円玉。これをじゃらじゃらポケットに入れて見物するのです。
さて、日本では「おひねり」に代表されるようにチップは紙で包むというのがしきたりになっています。「おひねり」しかり「祝儀袋」しかり「お年玉」しかり。現金を裸で渡すのは「はしたない」という文化です。しかし、これは日本だけの話であって、海外ではチップは裸で渡すのが当たり前です。
ホテルのベッドメーキングの際に枕の下に入れるのがいわゆるピローチップですが、これを紙に包んでやったら間違いなくゴミと間違えられます。海外では現金は現金としてアピールしましょう。
ちなみにピローチップに限らず、チップは小額紙幣で行なうのが礼儀です。海外旅行では一ドル紙幣をたくさん用意しておく必要があります。なおピローチップのつもりで旅行最後だからといってありったけの小銭を置いてくるのはやめましょう。枕元に小銭を積んでおくのは「泥棒を見張っている」という意味があり、メイドさんにいやな思いをさせてしまいます。
もっとも枕の下に入れるピローチップですが、アメリカではいまどきこれを律儀に行なうのは日本人観光客だけだとか。面倒なチップ制度は合理的なサービス料に取って代わっているようです。