私は、一通の気になる紹介書を何度も眺め、この人しかいない、この人がいい!と思いこみ始めていた。私の写真と連絡先を記入した本紹介書を見て、気に入れば彼から連絡があるはずなのだが、なかなか連絡は来ない。私の「お受けします」の返事は大阪のシステム部にいき、そこから本紹介書を作成して、相手の手元に届くまで、4?5日のはず。その他にも候補者は何人かいたのだが、返事を保留にしたまま意中の彼からの連絡を待った。
もしかして写真を見て好みじゃなかったのか?学歴のせいかも?色々考えたが、2週間経っても連絡が来ない。だからといってもお断りの返事も来ない。蛇の生殺し、状態とはこのことだ。が、まあ、考えようによっては会っても話してもいない人だし、データを見れば不安要素がないわけではない。ちょっと遠くの人だったこともあり、もっと近くでいい人に目を向けようと思い、候補者の一人と連絡を取って会うことにした。私から連絡ができる人を保険の意味で確保しており、保留にしていた人だ。受験で言えば滑り止めの学校か。
ある日、お互いの休日に朝からデートした。特別盛り上がったわけではないが、盛り下がったわけでもない。印象としては誠実でいい人のように思えたし、嫌いなタイプではない。が、何となくピンと来ない。運命を感じないのだ。この人を好きになれるだろうか、と自問した。何度か会ううちに気持ちが傾くかもしれないとも思ってみた。相手は割と乗り気だったようだが、好きになれるだろうかと自問してまで誰かとつき合う意味が見いだせぬまま、もう一度会う気にはなれず、結局はお断りした。
オーネットの紹介書を数十通受け取り、パーティにも参加して、2人と個人的に会ってみて、私はもう誰かを好きになれないのではないか、と思い始めていた。贅沢を言えるスペックではないことは重々承知しているつもりだ。こんな私の条件を飲み込んでくれる人はきっと希少だろう。だからと言って好きになれるかと言えば、そう簡単なものではない。意中の彼からは連絡が来ないし、来たからといってもそれはスタート地点にしかすぎず、うまくいくとは限らない。スタート地点にも立てないのだ。実に前途多難である。
本城愛子