本紹介書を見て気に入った彼からは連絡が来ない。その間に私の情報は全国版の情報誌に載り、全国各地から、下は20代前半(なぜに?!)から上は50代後半まで実に多くの人から申込の紹介状を受け取った。
捨てる神あれば拾う神あるとはよくいったもので、離婚歴のある子持ち女でもそれなりに需要はあるようだ。しかしながら、生身の人間として愛せるか、という大きな問題が立ちはだかっている。また、私には慣れ親しんだ居住地があり、近くには家族がおり、実は趣味にも似た大好きな仕事がある。
自由で結構のんきな生活を営んでいるのが実状で、これらを捨てて、どこか他の地で暮らそうと思うためには並々ならぬ愛が必要だ。今の生活を捨てて愛を注ぎ合える相手かどうか、と自問する日々。こうして相手の居住地を限定することが再婚を縁遠くしているのかもしれないのだが・・・。お見合いパーティで話した転勤族の男性も言っていたが、県外はNGという女性は多いらしい。
そして、ついに意中の彼から連絡が入ったのだ。一度会おうということになり、会ったところ、会話も気持ちも結構盛り上がった。相手の感触もまずまず良い。数回の電話の後、二度目に会ったときに「交際しよう」と言われたのだ。
気持ち舞い上がっていたが、この時点ではまだスタート地点である。他の候補者をキープしておいて、平行して会って検討するという人も多いらしいが、私はすべての紹介状をお断りにして返却した。二兎を追う者は一兎をも得ずというではないか。
実は気になる候補者もいたが、的を絞るというのが私の方針である。いっそのことオーネットをやめてしまおうかとも思ったのだが、この件を身内に相談すると、「滑り止めも受けずに東大受験するみたい。偏差値足りてる?」みたいに言われたので、さすがに退会までには至らなかった。で、彼とはどうなる?!
本城愛子
カテゴリー: オーネットの真実-結婚情報サービス体験記- -本城愛子-
シングルマザーが再婚を目指し結婚情報サービスに入会。一体どんな出逢いが待ち受けているのか?果たして再婚にこぎつくことができるのか?
恋愛・結婚市場の動向を検証しつつ、独身女性の本音と生態を描くエッセイ。
[16]意中の彼からは連絡なし。
私は、一通の気になる紹介書を何度も眺め、この人しかいない、この人がいい!と思いこみ始めていた。私の写真と連絡先を記入した本紹介書を見て、気に入れば彼から連絡があるはずなのだが、なかなか連絡は来ない。私の「お受けします」の返事は大阪のシステム部にいき、そこから本紹介書を作成して、相手の手元に届くまで、4?5日のはず。その他にも候補者は何人かいたのだが、返事を保留にしたまま意中の彼からの連絡を待った。
もしかして写真を見て好みじゃなかったのか?学歴のせいかも?色々考えたが、2週間経っても連絡が来ない。だからといってもお断りの返事も来ない。蛇の生殺し、状態とはこのことだ。が、まあ、考えようによっては会っても話してもいない人だし、データを見れば不安要素がないわけではない。ちょっと遠くの人だったこともあり、もっと近くでいい人に目を向けようと思い、候補者の一人と連絡を取って会うことにした。私から連絡ができる人を保険の意味で確保しており、保留にしていた人だ。受験で言えば滑り止めの学校か。
ある日、お互いの休日に朝からデートした。特別盛り上がったわけではないが、盛り下がったわけでもない。印象としては誠実でいい人のように思えたし、嫌いなタイプではない。が、何となくピンと来ない。運命を感じないのだ。この人を好きになれるだろうか、と自問した。何度か会ううちに気持ちが傾くかもしれないとも思ってみた。相手は割と乗り気だったようだが、好きになれるだろうかと自問してまで誰かとつき合う意味が見いだせぬまま、もう一度会う気にはなれず、結局はお断りした。
オーネットの紹介書を数十通受け取り、パーティにも参加して、2人と個人的に会ってみて、私はもう誰かを好きになれないのではないか、と思い始めていた。贅沢を言えるスペックではないことは重々承知しているつもりだ。こんな私の条件を飲み込んでくれる人はきっと希少だろう。だからと言って好きになれるかと言えば、そう簡単なものではない。意中の彼からは連絡が来ないし、来たからといってもそれはスタート地点にしかすぎず、うまくいくとは限らない。スタート地点にも立てないのだ。実に前途多難である。
本城愛子