先週の「お好み焼き屋でわかった日本語のむずかしさ」には思ったより多くのおたよりを読者の方からいただきました。元商社マン、通訳の方など同じ体験をお持ちのようです。
実はお好み焼き屋の翌日は別の日本人をお連れして会議のあと、例のブッシュ大統領と小泉首相が行ったという西麻布の居酒屋風レストランでお昼を食べました。席につくと、この日本人はいきなり元気よく仕事の話を始めたのです。私は「えーっ?そんな事はさっきの会議中に言ってくれればいいのに。」と内心思っていました。とはいえ、仕方がないので会話を取りもっているうちにどんどん食べ遅れます。私は女性としてはかなり早く食事を済ませる方ですが、香港人と日本人の通訳と私のコメントを話すというハンデをつけられてはとても追いつけません。そのうち、さっさと食事をすませた日本人が「まだ食べてるのか」という目で私を見ます。結局お昼は半分しか食べることができませんでした。
こういうシーンが続くと決まって心配してくれるのは外国人の方で、何か手伝ってくれようとしたり、「疲れていないか?」と気遣ってくれます。日本人の方は何だかしゃべりたいだけしゃべってすっかり仕事を終えた面持ちです。
会議の後のお昼はブレークです。つまり休憩時間です。それでも、がんがんと仕事の話をする日本人はとても多く、中には場所が変わるとリラックスするのか急に核心にせまった内容を切り出す方もあります。なぜ、食事の時くらい外国人をもてなす、あるいは私を休ませてあげようという配慮ができないのでしょうか。とにかく日本人がビジネスで使うあいまいな表現をどう伝えるかはかなり疲れます。「将来お願いしようと思います。」という日本人のフレーズには「それは今はいらない、ということですね。」と念をおさなければならないし「会社で皆で検討してから…」には「それは稟議が必要と言う意味からでしょうか。お返事はいついただけるのでしょうか。」というように確認しないと日本人ですら婉曲な断りなのか、本気なのかわかりません。
総合商社では外国人と外国語で食事をする事を「ヨコメシ」といいます。通常ヨコメシでは仕事の話はせず、人間的な関係を深めるのを主目的とします。日本のビジネスマンは仕事熱心かも知れませんが、あまりにも話題がない、カルチャーのなさ、話題のなさを時に露呈します。
最近はさすが減りましたが相手が女性の外国人だと「この人きれいだねー。年いくつ?結婚してんの?」という話題しかない方もいらっしゃいます。東南アジアなどに行くと官民ともに女性のトップや管理職が多く、女性ばかりで会議のあとにランチという事も不思議ではないですが、その国の伝統歴史、ファッションやら食べ物、趣味、家族の話にいたるまで話題がつきず、日本のビジネスマンに見せてあげたいと思うことしばしばです。それと同時にビジネス・ランチで女性と同席することがあまりにも少ない日本の風土を悲しく思います。
河口容子