[064]日本人の知らない日本人の歴史(2)

 先週号でご紹介した「石垣島の唐人墓」の話を読んだ私がまず感じたことは、人道主義よりも政治体制によって歴史教育も変わる、つまり欧米にたてついた話は隠されてきたということです。たとえば、インドネシアに残った2000人ほどの旧日本兵がオランダからの独立戦争をインドネシア人と一緒に戦った話を知る日本人は少ないと思います。また、日本のシンドラーと呼ばれる故杉浦千畝元リトアニア領事代理はナチスの迫害から逃れようとするユダヤ人のために当時日本の同盟国であったドイツにそむき人道主義から日本を通過するビザを発給し続けました。救われた命数千人。日本に戻った杉浦氏は外務省から解職されます。あの鈴木宗男によって名誉回復がなされなかったらこのエピソードもユダヤ人は知っているけれども日本人は知らない歴史になっていたかも知れません。
 マスメディアから発信される情報はあまりにも大量で一見あらゆる事を網羅しているかのように思えますが、それがすべてなのか、真実なのか、最近疑問を持っています。人間の行いには簡単に善悪の見極めがつくものもありますが、両面を持つものも多々あり、また世界が広がった分だけ、一挙手一投足が複雑な意味を持つようになりました。


そして民主主義の旗印を掲げる米国も奴隷貿易により労働力を得ていた国であり、私の子どもの頃はまだまだ黒人は制度として差別されていたことを思いだしました。日本人に対しても、現在70代くらいの商社マンから、若い頃米国で客先まわりをすれば「ジャップ」「イエローモンキー」などとののしられ鼻先で扉を閉められた話をずいぶん聞かされた覚えがあります。
 さて、唐人墓の話をまず伝えたかったのは知人の在日中国人3世の男性です。彼はもちろん日本で大学まで教育を受けているのでこの話は知らないはずで、知れば日本人に対する見方も変わるだろうと思ったからです。彼は奇しくもこの話と同じ福建の出身です。彼は次のようなメールをくれました。
「興味深い情報有難うございます。石垣島には行ったことありませんが、沖縄には3度も行きました。日本、中国、米国、そして独自の文化が複雑に入り混じり、また、歴史の重みを感じさせる島であり、私の大好きなところです。そこの山裾に中国南方型の墓が少なからず残っていたことを記憶しております(今回の情報と関係しているかどうかはわかりませんが・・・)。いずれにしても同感ですね、歴史的事件は今になっては仕方が無い事、同じ徹を踏まない事が大事と考えます。日本人にも一部心ない人がいますが、中国人にもそのような人が以前より目につきます。悲しい事件が多い今日この頃ですが、ホントに心痛みます。」
 中国人による犯罪の増加により日本人に警戒心が高まり、日本でまじめに働く中国人や留学生が心を痛めています。一方、中国に行き黙っていれば中国人にしか見えない私ですが、ひとたび日本人と紹介されるやいなや、嫌悪感が露骨に表れる中国人に何人も会いました。若くて高学歴の人にもそういう人はいました。今度会ったら、この唐人墓の話をしようと考えています。
河口容子
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