[126]中国の工業団地事情

先日、都内の某一流ホテルにて中国広東省佛山市三水工業区の投資セミナーが行なわれました。最近は中国関連の投資セミナーや見学ツアーがたくさんあります。全般的なもの、あるいは省や市単位のものはよく目にしますし、いくつかは行ったことがありますが、私にとって工業団地単位の投資セミナーは初めてでした。
 私自身もセミナーの講師をやらせていただくことがありますので、実はセミナーの進行や講師の様子というのは、大変関心があり、学びの場でもあります。今回は区長と副区長、つまり行政区の公務員がプレゼンをやってくれるのですが、にこやかでプレゼン慣れしていることにまずびっくりです。工業団地をDVD で紹介するコーナーもあり、他の国の観光局や工場誘致のセミナーと何ら遜色がありません。
 この工業団地は18万平方キロですでに世界中から2600社以上が進出しています。その名の通り、三つの川に囲まれ、川口に港を持つという中国ならではのスケールの大きさです。高速道路が集まっており、広州の新白雲空港、トヨタ、ホンダ、日産の各工場からも数十分という利便性がうたい文句です。もともと広州市のビジネスマンの保養地として開発されたエリアでもあり、風光明媚、物価も安く、ゴルフ場に四つ星ホテルがすでにあり、五つ星ホテルの建設も予定されています。


 区長、副区長が口をそろえて言うには「行政は皆様へサービスを提供するのが仕事」「高品質の行政サービス」、具体的には窓口の一本化、手続きの簡略化、審査期間のルール化、進捗状況の確認制度、先証後認制度(確認が後でも問題ないものは先に手続きを進める)、行政から企業への専門家派遣、レンタル工場サービスなど至れり尽くせりです。社会主義にあってこの発想ですから、一体日本は何主義なのか首をひねってしまいます。
 きわめつけは、「皆様の工場を私の命以上に大切にします。」私自身はビジネスでこのような表現をされるのはあまり好きではないのですが、中国語でプレゼンを終えた区長はなんと中国人の通訳がもたもたとえんえん日本語に直している間、マイクから少し外れたところで90度のお辞儀をし続けたのです。
 一方、参加者側に目を転じると、投資セミナーは中高年の男性が多いのが常ですが、日本人の特徴なのか迫力にいまひとつ欠けました。広東省では「民工」(出稼ぎ労働者)が100-200 万人不足しているとも言われます。より賃金の高い地域へ移動したり、賃金の低いところでこき使われるより田舎にいるほうがまし、という人も出ていると聞きます。完全な労働集約型産業はベトナムやカンボジアなどのほうがはるかに安く、中国企業が投資しているくらいで、まさにアジアは力強く動いています。
 日本を除く中国、韓国、タイなどアジア 9ケ国の GDPの伸び率は平均 6パーセントを越えます。ほとんど成長しない日本がいつまでもご近所にお金をばらまかざるを得ず、それでも好かれない理由をまず考えることがグローバル化時代の日本の課題のような気がします。
河口容子
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