キャラクターを中心としたライセンス・ビジネスの国際見本市「ライセンシングASIA」は、文化の香りがし、喧騒のない秋らしいイベントです。
同時に開催されたセミナーでは中国市場の最新情報を聞くことができました。子ども以外を対象とした調査では、漫画を「非常に好き」「好き」と回答した人が 4割を超え、アニメについては 6割が「非常に好き」「好き」と回答していることから、もはや漫画やアニメは子どもだけのものではないという認識のようです。アニメに関して中国製は人気がなく、日本、韓国、欧米のものを希望している人が圧倒的多数です。「クレヨンしんちゃん」「ちびまる子ちゃん」の認知度は何と 70%を越えます。ただし、中国政府は輸入量と放送量の面において規制を行なっています。
キャラクター商品についても「よく買う」人が12.9%、「たまに買う」人は44.5% ですが、中国は海賊商品が「業界スタンダード」で、本物の販売よりニセモノが先行するケースも多々あります。特に、 DVDやCDの 85%が海賊版で、法的保護が強化されるとともに、売る側も低価格の正規品を出し海賊版の横行を防止するという策も取られているようです。人口の多さからみれば「薄利多売」で十分利益が出るということでしょう。
TVドラマについては、中国でも韓流が圧倒的な強さを誇ります。2004年10月15日号「日中韓のキャラクタービジネス」でも触れましたが、韓国は国を挙げてコンテンツ・ビジネスの輸出を推進しています。韓国ドラマはアジアのみならずアラブ諸国にも輸出されていますが、ドラマに登場する韓国製品の有力な宣伝媒体ともなっています。日本でも韓国ドラマは流行っていても、ライフスタイルや製品への憧れはあまりない、この視点が欠落していたわけです。というわけで日本政府もコンテンツ・ビジネスの輸出へ向けてやっと腰を上げました。
そんなところへ飛び込んできたのが台湾のエバー航空のハロー・キティづくしのエアバスです。機体のペイントはもちろんのこと、壁紙、客室乗務員のエプロン、紙コップ、搭乗券などなどにいたるまでハロー・キティがついているらしく、3年間台北と福岡を往復します。日本好きの台湾人を観光に呼び寄せると同時に航空会社側としてもキャラクターの力を借りてオフシーズンの稼動率を高めようという狙いのようです。同業のシンガポール航空も長らくハロー・キティがマスコットです。空飛ぶキティちゃんは日本の親善大使でもあり、国際ビジネス・ウーマンとも言えましょう。
中国のあるコンビニが客単価を上げるために「一定金額以上買ったお客様」に著名キャラクター・グッズをさしあげますというキャンペーンをやったところ想像以上に数字があがったそうです。中国でも「鉄腕アトム」を見て育った世代が30代となり、その子どもたちも含めれば巨大な市場になります。少子高齢化に入った日本では、中高年をターゲットとしたビジネス構築をせざるを得ませんが、アジアの国々では人口構成が違うことを思い起こせばビジネスチャンスが見えてくるのではないでしょうか。
河口容子