[185]言語の話

 香港のビジネスパートナーと大阪から東京へ向かう新幹線の中では、通路を隔てた隣に韓国人のビジネスマンとビジネスウーマンが乗っていました。携帯に電話がかかれば、器用に韓国語と日本語を使いわけ、レポート用紙には英語がぎっしり書き込まれていました。私はビジネスパートナーに「韓国語では漢字1字に1音しかないけれど、どうして日本語にはたくさん音があるのでしょうね。」と言いました。こんな風に私たちはよく言語の違いについて話をします。「韓国は中国の影響を古くから受けているからそのルールを守っているのさ。日本の場合は中国から借りてきた言葉もあるし、固有の言語を漢字の意味で当てたり、音で当てたりと複雑な変化をしたのだと思う。」「日本人は何でも複雑にするのが好きですからね。」「僕は日本語がどうして必ず後に母音がつく発音になったのか絶対解き明かしたい。」「イタリア語に似ていますよね。日本人は本当はイタリア人なんですよ。きっと。」
 「あなたみたいに聞きながら言葉を覚えるなんて信じられない。僕はまず文法を勉強してからでないと。」ビジネスパートナーは広東語、英語、北京語をまったく同じレベルで操りますが、日本へは何十回、いや百回以上は来ているのに「こんにちは」「ありがとう」すら言ったことがありません。大阪のある会社ではオーナーの奥様が中国の方で、彼は北京語で商談をしていました。途中で、私のほうに向き直り英語で説明しようとしました。「わかってます。」と北京語で答えると皆が爆笑しました。いくらでいくつと言った繰り返しがほとんどですから普段は使わなくても聞いているうちに慣れてしまいます。
 タイの方とベトナムの方の英語が聞きづらいことがあります。これはこれらの言語は中国と同じ音調言語で、同音を調子によって違う意味に使いわけ、しかも一語が一音節です。母語の調子を英語に持ち込み、音節ごとにぷっつんぷっつんと発音されたら聞きづらくなるのも致し方ありません。不思議なものでこの理由がわかっただけで彼ら特有の英語が聞きやすくなったのです。
 一方、インドネシアの方の英語は聞きやすく、理由は元オランダ領でオランダ語の影響を受けています。ドイツ語とオランダ語は親戚みたいなものですからドイツ語を履修したことのある私には発音の法則性などがわかるからです。
 その点、日本語というのは上記の言語とはまったくタイプの違う言語です。同音異義の言葉は多々あり、また立て板に水のように話されるとどこが区切り目かすらわからない場合があります。聞きながら頭の中で書き言葉に変換しながら理解し、また文末の結果までを推測しているような気がします。外国人で日本語を学習する人は読み書きまでできないと理解度のレベルはかなり低くなるような気がします。こういう言語的特性から逆に日本人が英語を学ぶ際に読み書きが重視されたと私は勝手に推測しています。
 起業後しばらくたってこのメルマガをスタートしましたが、もう 5年半になります。唯一の自慢は毎週欠かさず書いていることです。会社員の頃は出張報告、営業週報などと嫌でも他人に見せるために時間の制約がある中で作文をしなければなりませんでしたが、自分が社長になってしまうとメモ程度ですんでしまいます。また、職業柄英語でのコミュニケーションが圧倒的に多く、そのうち日本語で一定量の文章が書けなくなってしまうのではないかという危惧があり、どんなに忙しくても具合が悪くても毎週きちんと書くようにしています。おかげさまで総配信数は30数万を越え、ホームページへ直接お越しになった方も入れればちょっとした自治体の人口です。少なくともブルネイの人口は超えました。この場を借りてご購読の御礼を申し上げます。また、ホームページとブログサイトを一体化してリニューアルをしましたのでhttp://www.tamagoya.ne.jp/mm/yoko2/b/へもぜひお立ち寄りください。
河口容子