[205]まずはアクション、次にスピード

 先週お伝えしたギフトショーへ行った翌日は銀座でベトナム・グッズの商談会がありました。1ケ月間行なわれた展示会の締めくくりが日本の輸入者と出展業者との商談会です。来場者の中に先月の私のセミナーを受講された方がたのお顔があり、ご挨拶をくださり大変うれしく思いました。この日はシンガポール政府関連のミーティングが別のフロアであり、終了後、一緒に出席した知人たちも商談会にご案内しました。
 グッドタイミングだったのは、2003年 8月21日号「輸入から起業へ」で取り上げたセミナーの受講生の男性です。当時、セミナーのフォロー用に作ったメーリングリストを利用して、あるベトナム製品を買い付けたいが情報はないか、との問いかけがあったのです。私はすかさず、この展示会に偶然その商品が出ており、また商談会があることを伝え、私も現場にいるので時間があればご覧になってはどうですか、もし気に入らなければ別の業者を紹介するように大使館にお願いをしますから、と返事をしました。
 この日、彼はやって来て、中年女性のオーナーと商談を始めました。彼のオーダー通りの商品は作ってもらえそうですし、数量も何とか調整がついたようです。あとは価格をもうひと押し。
 その晩、彼からお礼のメールが届き、商談の続きは翌日ギフトショーへの商談に持ち越されことになったとの報告を受けました。私からのアドバイスとしては、日本人は目先のことばかり細かく要求するので、相手がどんな取引をしたいのか全体像が見えず条件面で損をすることがあること。相手の立場に立って相手の安定した利益につながるような取引条件を提示すれば単価は下がるはず、とアドバイスをしました。
 また、翌日メールをもらい、ほとんどすべて要求はのんでもらい、独占販売契約も締結でき、その代わり違う商品も取り扱ってみることにしたので近々ホーチミンへ行くとのことでした。彼のメールの中で一番うれしかったのはオーナーとお嬢さんのお人柄が素晴らしく、良いつきあいをしていけそうというくだりでした。元公務員の彼も今ではすっかり交渉の達人ではありませんか。
 個人事業者や小企業では黙っていても仕事は来ません。まずはアクションです。絶妙なタイミングのメールから商談の成果が上がりました。他人のアドバイスを受け入れ修正ができ、契約に持ち込むまでのスピードも大企業にはまねができない技です。先週号でも触れた刺繍の女性と言い、昨日まで想像もしていなかった海外の相手とひとりでビジネスをスタートするこの運命的な出会いをお手伝いでき、夢の実現への第一歩を見守れるのは私としても実に感動的な瞬間です。また、このビジネスを通じて途上国の発展にささやかながらも貢献できることを思うと私自身も天職を得た感謝でいっぱいになります。
河口容子