[213]急遽APECのハノイへ

 急遽、APECのハノイに行ってきました。昨年の 9月に手工芸品の日本市場への輸出促進のセミナーがベトナム政府の貿易促進機関の主催で行なわれ、マーケティングの講師を務めさせていただきましたが、今年はAPEC期間に手工芸品の見本市が開催されるので、それにあわせてセミナーを、という依頼です。何とベトナム大使館から依頼を受けたのは出発の2週間ほど前です。大使館の商務官は日本語が不得手な事から、まずはデザイン教育を担当してくださる工業デザイナー探し、セミナーの内容の調整、契約条件の確認から私の仕事はスタートです。いくら2度目で傾向と対策はわかっているというものの、パワーポイントの作成、デザインの講師と内容を調整、自分の他の仕事の調整、ベトナム大使館でのリハーサルと打ち合わせ、荷造り、お土産の手配と飛ぶように時間は過ぎて行きました。
 11月上旬にベトナムが WTOに加盟することが決まり、APEC開催ともあわせ今年はベトナムにとってまさに記念すべき年です。社会主義国であるベトナムがどんな警備体制を取るのか、国内は公安が目を光らせているので安全ですが、海外から入って来る人をどう制御するのか、自分の準備もさることながらそんな事も興味しんしんで出発しました。
 成田空港発ハノイ行きのベトナム航空便はかなり空席が目立ちました。APEC取材のクルーも同じ便に乗っていましたが、ハノイはもともとホテルが少ないため開催期間中は予約が取れないところが多く観光客が少ないのでしょう。ハノイのノイバイ空港ではバゲージ・クレームが不思議なほど時間がかかりました。荷物がひとつずつゆっくり出て来る所を見ると再度X線でチェックしていたのではないかと思います。
 空港から市内へ向かう途中、今年の4月には骨組みだった家々がすっかり建ちあがって大きな住宅群になっています。まさに「街ができる」という感じです。家々には赤に黄色の星のついた国旗がはためき、沿道にはAPECの垂れ幕がいっぱいです。市内に入っても幹線道路からシクロ(自転車の人力車)が消え、天秤棒の物売りが消え、自動車や真新しいバイクがふえ、いつものハノイではないようです。
 ホテルはマレーシア系のハノイ唯一のブティックホテル(小型でインテリアなどに凝っている隠れ家的ホテル)です。何と私たちの前にジャーマン・シェパードを連れた大柄の黒人客がチェック・イン。このホテルは米国大使館が借り上げており、お犬様は警備要員のようです。米国は1,000 人以上をAPECに送りこんでおり3つのホテルに分散して投宿していました。私たちはいわばベトナム政府のお客さんですから怪しい者ではありませんが、気にせず泊めてくれる米国はさすがに余裕があります。予約をしてくれた政府機関の幹部によるとハノイにある日系のホテルには断わられたそうです。
 到着は夕方近くで仕事もなくハノイの名所ホアン・キエム湖周辺を散歩。いたる所にイルミネーション。湖と森に囲まれ、ちょっとレトロな感じで薄暗いこの都市が好きな私としてはちょっとがっかり。疲れたのでタクシーでホテルまで戻りましたが、ちょっとぼったくられた気がします。もともとベトナムの通貨であるドンは桁数が多く、1万ドンで74円ほどです。慣れるまで、現地の物価とも考え合わせるとちょっと金銭感覚が麻痺します。APECのおのぼりさん目当てにぼったくるハノイっ子も出るかも知れない、と気を引き締めての初日スタートとなりました。
河口容子
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