男性顔負けの能力と意欲にあふれた女性なのになぜか伸びずに終わってしまう人がいます。ビジネス社会ではいずこも圧倒的に男性社会です。原因のひとつは取引相手に「素敵な女性と思われたい」あまりにはっきり主張ができず、男性の強引さにいつも屈してしまう人、あるいは奇妙に甘えてみる人。私自身はたとえ「嫌な女と思われても仕事のできる女と評価されれば良い」という持論で生き抜いてきました。素敵な女性なんて個々のものさしが違うわけですし、目の前にいる男性は結婚相手でもボーイフレンドでもなく取引先なのだから遠慮せずに仕事師ぶりを発揮したらよいのです。20代では可愛げのない女でもスキルと経験を重ねるにつれ、実に錬れた素敵な女性になること間違いなしです。
もうひとつの原因は男女関係で墓穴を掘る人です。いくつも取引先を持っていて公平に対処しなければいけない立場の女性がある取引先の男性と一緒に暮らすようになり、取引も癒着関係におちいったケース。彼女の会社が他の取引先から一斉に苦情を受け、彼女は去ることに。スピード出世でそのポストを得ただけに自惚れや気のゆるみがあったのかも知れません。
別のケースで企業経営者の女性でしたが「自分に気があって親切にしてくれると誤解し」たため、相手の言いなりに多額のお金を払い、とうとう会社をたたむはめになりました。他人が冷静に見ればその男性は仕事とお金を求めて彼女の所に来たに過ぎません。仕事師に徹し切れなかったという事はそもそも彼女が経営者に向いていなかったのでしょう。彼女たちはこんな事がなかったら、ずっと私の良きビジネス・フレンドでい続けただろうと思うだけにとても残念です。
ビジネス・フレンド、私の場合はビジネスを通じた友人で単なる取引先や仕事仲間の総称ではありません。気軽に仕事上の相談をしあったり、情報を交換できる相手のことです。これは双方向のおつきあいですので、いつもお世話になりっ放し、逆にお世話ばかりしている相手はビジネス・フレンドとは言いません。私の仕事柄、相手は経営者、管理職に限定されますので日本では女性のビジネス・フレンドは数えるほどしかなく、また日本の男性も女性の対等な進出が進んでいる業界の方でないと抵抗があるらしくなかなかビジネス・フレンドになってもらえません。
という訳で私の場合はビジネス・フレンドが海外に勢いよく広がっていきました。もともと元気をくれる人、インスパイアしてくれる人が好きですので、違う分野で自分と異なる人生観なり経験を積んだ人の意見が非常に参考になります。そういう意味でも外国人ビジネスパーソンはうってつけだったわけです。
ビジネス・フレンドのありがたさは一定の距離をキープしたまま、個人生活には割りこんでこない存在であることです。従ってささいな感情のもつれでけんかをすることもないし、しばらく放置しておいても何の文句も言われない。実はビジネス、特に金銭の授受を伴う相手というのは非常に本性がわかるもので、個人的な友人よりは本質を見抜いている場合もあります。自分の良き理解者として、自分の世界を広げてくれる存在として私のような一人企業の大きな支えであり、仕事を続ける女性のみが持てる男性(もちろん女性もいますが比率は極端に少ない)の友人たちの自慢のネットワークです。
河口容子