[317]続 アセアンからの食彩

 12月に入ると宴会、お歳暮、クリスマス、おせち料理を含め、食品関連のニュースや広告がどっとふえてきます。そんな中、恒例のアセアン諸国の食品展に行ってきました。
 「待ってました」とばかりに呼び止められたのは天然フルーツ・ジュースが売りもののマレーシアの飲料メーカー。アセアン諸国へ行くとトロピカル・フルーツのフレッシュ・ジュースを存分に味わえることが本当にうれしいのですが、マレーシアはボトル・デザインも洗練されているのが強みです。マレーシア人の部長とお話をさせていただいた後「サンプルはお入り用でしょうか?」とたずねられ専門分野でもないので「いいえ、結構です。」と遠慮すると「重いから嫌なんでしょう?」と笑われました。次のブースへ移る頃「これをどうぞお持ちください。」と通訳さんがサンプルのどっさり入った紙袋を持って追いかけてきてくれました。なかなか奥ゆかしく心憎い配慮です。相手が通訳さんならこちらも断るわけにはいかないからです。
 会場には通訳さんたちが商談のサポートのために配置されているのですが、私は特に必要はありません。しかしながら、彼女たちを無視して直接話しているのも何だか失礼な気がして一緒に話に加わってもらうよう工夫をしています。そのせいかベテランの通訳さんたちとはその他の展示会場でお会いするので、見知った通訳さんがイチオシの出店者を紹介してくれる事もしばしば、あるいは商談のまとめ方など逆に相談されることもあります。
 ドラゴン・フルーツのリキュール。これもマレーシア産。「龍」という漢字がラベルに書かれています。アルコール度も低めで香りは豊かですが、すっきりした味わいです。このメーカーはトロピカル・フルーツ入りの豆乳もありました。日本では豆乳というと紙パックですが、こちらは PETボトルのミニサイズでかわいらしくカラフルです。
 圧巻はカンボジアのダイエット・サプリ入りインスタント・コーヒー。メタボ解消用で女性用はピンクのパッケージで美肌、男性用は黒のパッケージで筋肉を鍛える成分が入っています。 1回分ずつアルミパッケージに入っており、切り口がないため簡単に開けられないのが難点ですが、印刷もデザインも結構素敵です。女性の役員が「最近はカンボジアでもダイエットやメタボを気にする人がふえています。」と言うからには豊かな層がふえているのでしょう。彼女の見事なシルクのワンピースをほめたせいか、カルシウムとビタミン D配合のチョコレート・ドリンクの粉末のサンプルまでいただきました。
 自然の恵みから高付加価値化へとアセアンの食品は進化しているようです。しばらく、アセアンの食品を楽しみながらその暑さをなつかしんでいたところ、ある蔵元から手紙をいただきました。「北陸の冬の風物詩、松ノ木の雪吊り。軒下のつるし柿。初冬を感じます。このような11月11日には、蔵人が蔵入りしました。これから始まる酒造りを思うと身の引き締まる思いと同時に、蔵内が活気に満ちていることに喜びを感じます。。。」何と凛々しい、そして祈りに満ちた思い。手間暇と愛情を惜しみなく注いで自然と向き合ってもの作りをする人たちがいる、彼らこそ日本のものづくりの原点なのでしょう。世界最高水準の食品加工技術を持つ日本が手造りの良さを残し、きめ細かに進化させている所に日本の奥深さとゆかしさを感じ取りました。
河口容子
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