[065]年末の船積み

 輸出をする者にとって年末の船積みというとせわしなさとともになんだか優越感を感じます。年内必着の貨物で欧米向は航海日数が約 1月もしくはそれ以上ですので12月に入ってからは船積みはしません。税関も年末年始はお休み。アジア向けであっても輸出通関でトラブルを起こさない、書類も万全、スケジュールどおりに貨物をさばけるベテランたちだけが腕を競うかのように登場する季節だからです。輸出の売上は通常 B/L(船荷証券)の日付をもって計上するので、年末を売上とともに過ごせるという誇りもあります。たとえば即納してもらえる商品でなければ正月明けに発注をして 1月中に船積みをするのは至難の技です。そして 2月は短い。 3月決算の会社なら12月に船積みがあるのとないのでは決算まで影響してくるからです。
 経験のない方は、宅配便を大量に遠い所へ送るような感覚でとらえている方もあるでしょうが、輸出の場合、船積書類を細かく正確に作成するという職人芸的な仕事を必要とします。そして世界一厳しい日本の税関による輸出通関もクリアしなければなりません。現在、輸出申告は通関業者にある端末からデータを税関に送って申告します。ある一定の比率で書類審査というのがあり、税関に船積み書類一式を通関士が持参しチェックを受けなければなりません。また、更に現物検査といって輸出貨物の現物をカートンをあけてチェックされることもあります。

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[061]輸入から起業へ-後日談

  8月21日号に「輸入から企業へ」というタイトルで小口輸入の話を書かせていただきました。読者の方にもご自分の事として興味をお持ちになった方がいらっしゃったようです。さて、あれから 3ケ月、このセミナーの受講者たちはどうしていると思われますか?実は11月22-24日、ある地方都市のビルで行われたインポートバザールに「店主」としてデビューするのが最終ステップの「発表会」だったのです。
開講したのは 8月、週 1回計 5回の授業が終了したのは 9月第 1週目です。受講生はこの間に自分の取り扱う商品と海外の仕入先を決めます。そしてインポートバザールに向け仕入先との交渉、発注、輸入業務、価格の設定や販売計画を各自で準備しますが、講義が終了してからも、 2度のスクーリング、成田空港の見学と顔をあわせる機会が設けられ、メーリングリストでのサポート体制もばっちりです。そもそもこの講座の受講資格は、高校レベルの英語が解せること、PCが使えることが条件でした。貿易実務については未経験でも大丈夫というふれこみではありましたが、実際に参加しているのは貿易実務講座の修了者、会社で輸入を担当している方、個人輸入の経験者などです。
小口輸入にどんなスキルが必要かといえば、ますは商品選択能力、日本語で通じる相手が海外で見つかるのはごくまれですので語学力、貿易実務の知識、商品によっては法令で規制や検査が義務付けられていますので書類作成能力、利益計算も含めた販売能力です。実際のところ小口輸入というのは決済条件、受渡条件に選択肢がほとんどないため、マーケティングや販売能力が勝負といえます。
 小口と言っても仕入先はメーカーや問屋となるわけです。交渉を重ねても小口では売ってくれないことも多々あります。もちろん、はなから相手にされないこともあります。また、商品によっては輸入販売に必要な検査費用をコストに参入すると小口では販売価格がべらぼうに高くなってしまうこともあります。受講生たちは修正に修正を重ね、とうとう秋口にはバリ島に買い付けに行く男性も現れました。パーティ用のキッチングッズを扱う予定の女性は旅行先のニューヨークでもしっかり商品をチェック、一方国内でもトレードショーめぐり、ショップ視察の日々がそれぞれ続きました。

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