[013]性別にご用心

 日本語は複雑と思うものの、唯一気楽なのは、名前を呼んだり、書いたりする時に性別がないことです。ところが、英語では区別しなければなりません。顔を知っている人ならともかく、会ったことも見た事もない人に手紙を書いたり、電話をする時、はたと困ることがあります。
 私自身、Mrと書かれたメールやFAXを何度ももらい、「私はMsでございます。」と言い返すのも変なので署名のところにカッコをつけて(Ms)と書いておいてから名前を書くのですが、いつまでも気づかない人もいます。外国人の友人で何度も会っているのに、その人の秘書がいつもMrとメールを書いて来るので、これほど何回も続けば逆にきっと女性だと思われると何かまずいことがあるのではないか、と思い、ご本人に会った際に冗談でそのように聞いてみたら、「女性だと秘書に言ったことがないだけで、単なる間違い。何も都合の悪いというような問題はない。」ということで大笑いしたことがありました。

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[012]貿易というお仕事

 私が起業した2000年の春はまだ起業ブームが続いていました。その頃、何人かの男性がご自分の起業相談にのってほしいと電話をかけて来られました。理由は今の職業では「リストラの不安がある」からというもので、貿易「なんかでも」やってみたいという主旨でした。プロとして長年この道に生きる者としては「なんかでも」と一口に言われるのは非常に心外でしたが、逆に魅力ある職業に思えるのかも知れないと気を取り直し、たずねてみると「貿易なんかやったこともないけれど、英語できないんで英会話スクールでもまず行った方がいいですかね?」と言われ、再びがっかりした記憶があります。
 貿易実務そのものは世界共通のルールで動いていますので誰でも勉強すればできます。ただし、売り手、買い手、運輸業者、税関、港湾関係の作業をする会社、船会社、通関業者などいろいろな人の手を経て始めて成立する仕事だけになかなか教科書どおりにはいきません。他人の仕事への理解や配慮、コミュニケーション能力も必要です。しかも、相手は文化、習慣の異なる外国人です。また、時差の壁もつきものです。通信手段の発達で海外とのコミュニケーションは手軽で経費もかからなくなりましたが、緊急時にはやはり深夜までの残業や徹夜もあり得ます。おびただしい量の経験、それも失敗の経験がなければ間口も奥行きもあるプロの貿易人にはなれません。

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