毎年各国首脳や財界リーダー数千人がスイスに集う「ダボス会議」で知られる世界経済フォーラムが発表した2008年の世界のジェンダー・ギャップのランキングでは日本が98位との報道がありました。 130ケ国を対象に教育、保健、経済、政治といったカテゴリーでの男女格差を指数にしたものです。ちなみにトップ 3はノルウェイ、フィンランド、スエーデンで指数的には0.8以上です。確か1が男女まったく平等という意味だったと記憶します。
スリランカ12位というのはちょっと不思議な気もしますが、米国が27位で0.7179、ロシア42位、タイ52位、中国57位で0.6878、ベトナム68位、シンガポール84位です。日本98位0.6434はケニア88位、バングラデシュ90位にも劣るというのは先進国としてはちょっと寂しいものの、当の日本女性たちが不満に思い、自ら動きださない限り、これは策を講じても無駄だと思います。
教育、保健分野は差は少ないどころか、日本女性は世界一長寿というハイスコアをもってしても98位になるのは社会進出しても賃金や昇給の格差、政治参加率の低さにあるようです。私自身は能力と意欲のある女性に対する「機会均等」さえ維持されていればそれで良いと思います。あとは本人の意思と実力で勝ち取るのみです。
私が総合商社に入社した頃は職種制度がなく、男子社員、女子社員という性別での区別しかありませんでした。雇用機会均等法の施行を前になぜか男子社員が自動的に総合職となり、女子社員が一般職と呼ばれるようになりました。そして申し訳程度に一般職の総合職への転換制度を作るに事になり、私は労働組合の人事制度諮問委員のひとりとなりました。専従ではありませんので委員の仕事は夜 7時頃から時には12時を越しましたが、私の注力したのは男性の総合職から一般職への転換制度(逆もなければ平等な制度と言えないからです)と評価の公平性に関する制度づくりです。
一方、社外では経団連の下部組織で働く女性のための経済誌の編集のお手伝いをしていました。「女性にも総合職の門戸を開放せよ」と単純に騒ぐ人たちもいましたが、私はこうやって外堀内堀から総合的に攻めて行くタイプです。今から考えると仕事だけでも暇ではないのによくそんなパワーがあったと思いますが、他人が作ってくれたものを選ぶよりは自分で創り上げるのが好きな性分ですので寝食を削ってでもやってしまいます。
日本の大手企業は男性優位主義です。男性と同じ能力なら同じポストを得るのは絶対無理です。昇進するにも限界があります。では、自分で会社を作り社長になったら良い、と思い起業もしました。もちろん起業の理由はそれだけではありませんが、私は自分で決めて自分で責任を取るのが好きですから、会社員の頃より100倍くらいストレスがなくなったような気がします。
日本のクライアントは女性の活躍できる公的機関と中小企業のみ。あとは海外のクライアントが圧倒的に多いのもフレキシビリティや伸びようとするエネルギーに魅力を感じるからです。おまけに何と世界で最低の部類の男女差別の国で社長をしているのだからどんなに優秀なのだろうと思ってもらえ、大変有利です。「天は自ら助くる者を助く」世界98位のジェンダー・ギャップですら皮肉にも私の競争力を押し上げてくれています。
河口容子
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中国各地の反日デモの一部暴徒化、続いてニューヨークやロンドン、ベトナムでも中国人による反日デモが起きましたが、おそらく彼女は「チャンス到来」と思ったことでしょう。彼女とはマレーシアの国際通商産業大臣のラフィダ・アジズさん、何と1980年以来ずっとマレーシアの閣僚で、1987年から現職にあり、マレーシアの経済発展を引っ張ってきたパワフルかつお茶目な女性です。(彼女については2003年 8月14日号「2010年流れは変るか」および同年 8月29日号「サインの効果」でも触れています。)
中国が反日運動を押さえ込み、小泉首相がジャカルタで胡錦涛国家主席と首脳会談を行えるかどうか、という時、東京ではラフィダ大臣をミッション・リーダーとする一行が来日、恒例の「マレーシアビジネス機会セミナー」が開かれました。ここのところ、中国ブームで日本からのマレーシアへの投資が減っており、あるいはアセアン地域の工場を中国にシフトした日本企業もあります。そこへ今回のデモで、改めて中国一極集中のリスクが取り沙汰されるようになり、マレーシアの政治的な安定、治安の良さ、法体系も含めた産業インフラの良さ、英語でのコミュニケーションが可能という点をアピールして失地回復する絶好のチャンスとなったわけです。
案の定、某ホテルの 450坪の宴会場が満杯になるほどの盛況ぶりでした。毎回感動するのは、集客、資料と実に丁寧に準備されていることです。マレーシア大使館のほか、マレーシア工業開発庁が東京と大阪、マレーシア貿易開発公社が東京にオフィスを持っているせいもあるでしょうが、日本の経済産業大臣の挨拶も含め、政府機関や銀行団も含め万全の組織でセミナーが企画されます。
ラフィダ大臣はわかりやすい英語でお話をされますし、質疑応答はいつも一人で仕切ってしまうほどの博識と余裕ですが、また面白さも満点です。今回は茶系のロングスカートのスーツにぴかぴかの真っ赤なミュールをはいて登壇。「大臣は今日は素敵な靴を履いておられますが、マレーシア製ですか」との質問に、いきなりミュールを脱いで壇上にかざし「これはビニール製、革じゃないのよ、マレーシア製でたったの15ドル、欲しかったらマレーシアで買ってね。ちゃんと見ていてくれてありがとう。」いやはや、世界の女性の閣僚、高官でこんな風に自国産品を売り込めるのは彼女しかいないと思います。
セミナー後、個別の相談会が用意されています。実は私はあるプロジェクトをマレーシア向けに考えており、現地にパートナーになってくれる人を見つけたものの、なかなかうまく行かないものがありました。そこである政府機関名を指定して相談希望を事前に窓口のマレーシア工業開発庁に申し入れておきました。当初、その機関は来日予定はなかったのですが、知的でやさしそうな女性の CEOが来日して下さり、プロジェクトをサポートしていただけることになったばかりか、お土産物まで頂戴して申し訳ないような気分でした。ここに至るまで紆余曲折がありましたが、粘り、根回し、プレゼンテーション、何事も簡単にあきらめてはいけないと改めて感じました。
今回はたまたまセミナーで隣の席に中国系のマレーシア人が来られ、そのまた隣にパキスタンの方が来られ、名刺を交換したり、休憩時間に雑談をしたりと楽しく過ごすことができました。また、セミナー前にマレーシア大使館の公使を紹介していただきましたが、女性でシルクのロングスカートのスーツ姿でした。イスラム教の女性は脚を露出しませんので、民族服ではなく、こんなエレガントなスーツ姿をよく見かけます。いくつになってもミニスカートで走りまわっている私には羨ましい限りです。
セミナーが終わった週末にマレーシアでも反日デモがあったとのニュースを耳にしましたが、マレーシアは多民族国家でミッション・メンバーもマレー人、中国人、インド人と多彩でした。民族の融合を活力に変えるような政策を取っています。日系企業は1,322社、在留邦人は1万人強で、人口2000数百万人のマレーシアにとって立派な活力の担い手です。
河口容子
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