公務員はサービス業

ある外資系企業では管理・総務部門を「サービス部門」と呼んでいます。社員が快適に仕事ができるようなサービスを提供することによってスタッフは報酬を得るという前向で合理的なマインドに妙に感動したことがあります。一方、日本企業ではそういう部門は評論家気取りであったり、雑役係のように卑屈であったりして営業部門と対立していることが多いようです。

 約3年ほど前にある財団の定期刊行物で行政改革の特集号があり、意見を求められたことがあります。思ったことを話しただけなのにその刊行物始まって以来くらいの感想文が寄せられたと聞き自分もびっくりした思い出があります。

 その中で公務員としての評価は難しい試験に合格したからではなく、公務員としての資質、つまり「人々のために公平なサービスを提供できるか」「問題点の発掘と改善能力があるか」を重視すべきと言いました。そして、公務員は権力をもっているからではなく、国民にサービスをする人だから尊敬される時代が来てほしいとも言いました。

 これは公務員および納税者側のマインドの問題です。私もサラリーマン時代は税は給与明細上の数字でしかありませんでしたが、起業していろいろ勉強するようになりました。税理士にはお願いしていません。費用がもったいないのと納税者である以上、税務署がきちんと教えてくれるべきだという思想を持っているからです。幸い、所轄の税務署はいつも大変親切で、決算後の法人税の申告書類を作成するのに半日も指導してくれました。

 伏魔殿こと外務省から出てくる不祥事の多さ、これは良くも悪くも田中外相のおかげだと思っていますが、思いおこせばこれだけ海外旅行者がふえても在外公館のお世話になった人がどのくらいいるでしょうか。海外出張ではいろいろな所へ行きましたが、何かあったら最後は自力で脱出するか現地人の友人に助けてもらうことしか考えたことはありません。そんな思いで仕事をしている人たちから徴収した税金で酒池肉林におぼれているとは何とばちあたりなことでしょう。

 よく若い人たちにその人の組織の中での存在意義、ポジショニングといいましょうか、あるべきスタンスをアドバイスすることがあります。これをはっきりさせると仕事のやり方やコミュニケーションの仕方まで見違えるほど良くなることがあります。公務員もそうすれば、警察官の痴漢や消防士の放火などというパロディのような事件はおこるはずもありません。

 もちろん民間企業でも不祥事は多々あります。ただ、露呈すると本人のみならず、企業そのものまで淘汰されてしまいます。もはや大目に見てくれるほど経済的な余裕がないし、競争や企業倫理も地球規模になっているからです。

 公務員イコールサービス業と考えれば、納税者にいかに負担をかけずに快適に暮らしてもらう、あるいはこんなサービスがあれば税金を大目に払っても良いというようなアイデアがどんどん生まれてくるはずです。サービスが評価されないと役所や公務員も生き残れない、そんな国家には活力があると思います。

2001.07.26

河口容子

やっぱりデジタル・デバイド

 私が総合商社へ入社した1976年ごろは伝票は手書き、机の引き出しにはそろばんも入っていました。英文タイプも必須でしたが、時には清書という仕事もありましたし、コピー機は200人くらいで1台しかなくいつも機械の前に長蛇の列が出ていました。その頃の平均的OLとして25才くらいで結婚し、ワープロもパソコンもない家庭で専業主婦をしていたならば、こうやって起業することも、エッセイを書くこともないし、メルマガが何かすら知らないおばさんになっていたことでしょう。そのくらいITは人間の可能性を変えてしまいます。

 デジタル・デバイドという言葉を始めて聞いたのは数年前米国でパソコンを使える人とそうでない人に所得格差が生じているという記事を読んだ時だったと記憶しております。その頃私自身はパソコンの平均的なユーザーで自宅にパソコンも持ちインターネットもやっていましたが、非アルファベット言語国民にはキーボードはハンデとなり、普及はむずかしいのではないかとよく思ったものです。

 ところが、一説によると一般家庭での普及率は50%を越したとか、特に年収850万円以上の世帯では約80%、逆に250万円以下の世帯では約20%というギャップが生じている記事を目にしました。確かにパソコンはひところより値下がりはしたもののプリンターなどの周辺機器を買ったり、ソフトの買い替え、インターネットのプロバイダー使用料も含めると結構お金がかかります。統計的には当たり前という気がするものの、パソコンを標準的に使いこなすには慣れが必要なことと、若い人はこれからの長い人生を考えるとマスターしておく必要があるでしょう。収入が少なければ、習得する機会が減り、ますます収入を得る機会を閉ざしてしまうという悪循環を危惧しました。

 自営業の友人たちに言わせると「パソコン・スクールに行かなくてすむのも大企業のメリット。」確かにオフィスのOA化、パソコンの一人一台体制へと、自然に社内教育が行われ、わからないことは社内のパソコンマニアや情報システム部の人に聞けばたちどころに解答が得られるという恵まれた環境にありました。現在の就職難では正社員として働いた経験のない人もふえており、派遣社員として登録するのにもまずパソコン・スクールへ行ったという若い女性の話を聞くに及んで、業種、職種、会社の研修体制による格差の大きいことにも改めて感じさせられました。

 高齢層のパソコン・スクール通いもブームになっているそうで、インターネットを使っての資産運用や出歩かずに情報を収集できたり発信できる点は高齢化社会にむいているツールだと言えます。ここでもインターネットを駆使して特典を得たり人生を楽しむ高齢者とそうでない高齢者とのギャップが出てきそうです。

 私自身はパソコン万能主義者ではありませんが、小泉内閣がメルマガを発行し200万人が読者登録を行うほどの必需品となりつつあります。特別にお金を出して買ったり習いに行かなくても公共の場でパソコンが自由に使え、また気軽に指導してもらえるような環境づくりがIT大国への道だと思います。 

2001.07.19

河口容子