日本選手のメダルラッシュのうちにアテネオリンピックも閉幕しました。日本国民も、あれだけフィーバーした曽我ひとみさんの家族の帰国問題、サッカーのアジアカップ、ましてやサマワの自衛隊のことも昔の出来事のように忘れ、眠い目をこすりながらTVの中継に見入り、リアルタイムで多くの感動や勇気をもらった気がします。
私が起業してからしばらくしてシドニー・オリンピックがありました。会社員なら到底見ることができないような時間に試合を見ることができるのがささやかな喜びでもありましたが、ちょうどITバブルが崩壊する頃で景気に一段とかげりを感じ、希望と不安に満ち満ちた頃でもありました。まだ9.11の同時多発テロは起きておらず、もちろんイラク戦争など想像だにせず、世界はもう少し平和だったような気がします。そんな激動の世の中で、多くの方と巡り会い仕事を続けさせていただくことができ、また次のオリンピックを迎えたということで個人的には感慨無量です。
[096]感情的であること
やはり始まった曽我さん一家へのバッシング。「ジャカルタのホテルはぜいたくすぎる」「夫のジェンキンスさんは米国人、日本が面倒をみる必要はない。米国人と結婚した曽我さん自身にも責任はある」などと述べ立てている人がいます。おかげで参院選の結果もあっという間にニュースから消え、鈴木善幸元首相が亡くなったのすら知らない人もたくさんいることでしょう。私自身も税金の無駄使いはやめてほしいと思うものの、ホテルについては安全の確保と報道陣、北朝鮮関係者からさえぎるにはあの方法しかないのではないでしょうか。ホテル側としても他の宿泊客に迷惑をかけないためにはあのような措置しかないと思います。事実、ジャカルタには日系のホテルがいくつかありますがなぜ受け入れてくれなかったのでしょう?
ホテルがどうの、ジェンキンスさんがどうの、と言う前に本質的な問題は日本という国が拉致被害者の問題をあまりにも長く放置したことです。10代や20 代で拉致され四半世紀北朝鮮で過ごしたということは就職、結婚、出産と人生の活動的な時期をすべて北朝鮮で送ってきたことになり、リストラされるような年代になって日本へ戻って来れても、貯金があるわけでも、老後年金がもらえるわけでもありません。帰国後の生活設計のほうが私には気がかりです。また、米国人のジェンキンスさんならまだしも、寺越武志さんのように現地で要職に就き、北朝鮮の方と結婚し、お子さんも現地で結婚されている場合はどうするのでしょうか?曽我さん一家の再会から帰国までをワイドショー化してしまったがゆえに本質のほうが見失われているような気がしてなりません。