今年は恐ろしいくらいの暑さでした。温暖化どころか熱帯化、地球の怒りや悲鳴が聞こえるような気がします。先週号で触れたベトナム女性と無事東京で再会しましたが、「東京はベトナムより暑いです。信じられません。」を連発。アセアン諸国でもっと高い気温、それも長袖のスーツというビジネスフォーマル姿で何度も体験していますが、確かに東京の暑さは人工的な不快きわまりない暑さと言えます。
先日、北極の氷が想像以上に溶けているというニュースを耳にしました。なぜ南極は溶けないのかというと北極は海、南極は大陸だからだそうです。ちなみに北極の氷冠は3m、南極の氷冠は3,000m。このまま温暖化が加速すれば、海に沈む陸地も増え、いつか南極の氷も溶けて大地が顔を現すかも知れません。生態系がまったく変わってしまうことは明らかです。
最近気づいたことがあります。夏場、窓を開けている家が近所にほとんどないのです。住人たちはエアコンに 1日中ひたっているようです。庭先に小さな貸アパートを所有していますが、室外機が24時間鳴っているところもあります。私自身はエアコンを使いませんので、自室にもオフィスにもエアコンの機械すらありません。扇風機も使いません。記録的な猛暑に生まれましたが、当時はエアコンなどどこにもありませんでした。地球上にはもっと暑い国々があり、エアコンなど普及していなくても、皆生きています。夏は暑いのが当たり前、その中で自然の恵みに感謝し、ささやかな工夫をして涼を取るのが人間の智恵や粋ではないでしょうか。
とはいえ、私のデスクまわりは日当たりが良すぎるので、日中は例年37度前後、今年は40度に何度かなりました。机にのせている腕から汗が落ちて机が水びたしになったのにはびっくりしました。こんな按配ですから、炎天下といえど外出するのはまったく苦になりません。母がひどい乗り物酔いで車に乗れないため、車のある生活というのを生まれてからしたことがありません。外出は徒歩、自転車、電車です。半径 5キロまでは日常の買い物エリアですが、すべて徒歩か自転車です。もちろんマイバッグ持参です。
これだけでもかなりのエコライフ(エコロジーとエコノミーの両方)だと思いますが、もうひとつ自慢があります。紙はすべて裏まで使うことです。外部へ提出するもの以外はすべて紙を裏まで利用します。広告でもダイレクトメールでも裏が白ければすべて使います。会社のファイルには、ときどき広告のピンクやブルーの紙が混じっています。日本人は「何もそこまで」と思うかも知れませんが、私のおつきあいしているアジアのお金持ちたちは揃って皆そうしています。
戦後の日本の経済成長とともに「消費は美徳」そして「現在を楽しむ」という価値観に変わってきた気がしますが、だらだら無駄使いをするのと必要なもの、本当に好きなものにお金を使うのはまったく違います。だらだら無駄使いをするといくらお金があっても足らず、忍耐のできない怠惰な自分中心の人間を作りだします。また、お金だけが価値観の人間を増殖させ、金銭をめぐる事件が後をたたなくなります。地球の温暖化を機に日本人は考え直すことがたくさんありそうです。
河口容子
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今年から団塊の世代の定年退職が始まります。団塊の世代とは一般的に昭和22年から24年に生まれた方をさすようです。技術移転関連のお仕事でコラボをさせていただく企業の社長によると、最近65歳から75歳くらいの方が開発された案件を扱う事が多いそうです。この年齢の方々は戦後の製造業の復活をゼロから支えた世代で原理原則をよくご存知で蓄積された技術、ノウハウ、経験の圧倒的な量と質にあるそうです。また、この社長が公的団体に勤務されていた時代から海外へ派遣されるエリート技術者はずっとこの年配の方々のようです。幸か不幸か、このゼロからスタートするという経験が団塊の世代には継承されておらず、定年を機に活躍される方は残念ながら5%程度と見ておられるようです。この社長ご自身が団塊の世代であり、 1万人以上の技術者とのネットワークをお持ちだけに信憑性がある話として受けとめました。
私自身は団塊の世代の少し下ですが、総合商社の勤務時代に「これぞ商社マン、日本経済の尖兵」というような働きで印象深い大先輩は昭和一桁生まれから団塊前世代でした。個性的で光る人材は私と同年代か、それより下でした。政治の世界も団塊前の小泉首相からいきなり団塊下の安倍首相にバトンタッチしています。学生時代は学園紛争などで社会を変えると命をかけて闘っていたはずの団塊世代が社会人になったとたん手のひらを返したように旧体制に飲み込まれてしまった、というか洗脳されてしまったのか、あるいは変わり身が早いのか、私にはとても不思議、かつ多少不満感を持っています。
団塊の世代が成し遂げたのは新しいライフスタイルの完成でしょう。日本社会にあった上下の関係から水平の関係に重きを置くライフスタイルです。米国式の夫婦単位、それも友達夫婦的な関係、親子関係もかつては社会に恥ずかしくない子どもを育てるのが親の責任という概念から解き放たれたと同時に父権も失くしたような気がします。男女平等、女性の社会進出という空気はあっても、女性の大学進学率はまだ低く、都会のサラリーマン家庭では専業主婦がほとんどという意識と現実がアンバランスだった世代でもあるかも知れません。
退職後に彼らが変えるだろうと思うのはやはりライフスタイル面で、海外でのロングステイ生活者が増加するであろうと思います。団塊世代には海外駐在経験者も多く、また海外旅行もごく一般のものとなっているからです。東南アジア諸国ではリタイアした日本人のような「金持ちの消費者」を大歓迎でいろいろな制度、施設やサービスが整いつつあります。途上国では生活費が安い、あるいは日本と同じ生活費で豪華な暮らしができると期待される方も多いかも知れませんが、経済難民ではないのですから、それだけを目的にされないほうがいいと思います。日本人が納得できるだけの設備を備えた住宅環境は驚くほど安いものではありませんし、日本への里帰り費用も含め、外国人であるがためにお金で解決しなければならない事も生活をする以上は出てくるはずだからです。また、短期間の旅行では気にならなくても、長期間生活をするには耐えられない事柄がないかのチェックも必要です。まず候補地をいくつか決めて、パッケージ・ツアーを利用するのではなく、ご自分で航空券を買い、ホテルを予約して視察をされてはいかがですか?観光と違い、生活者としての視点で見る海外旅行というのもきっと新鮮な体験になるものと思います。
河口容子