先週は日本香港協会と香港貿易発展局共催の春節(中国の旧正月)パーティがありました。本来の春節より随分遅れての開催ですが、東京は春らしい陽気となり、中国本土とのCEPA(貿易自由化)協定も1月から発効、香港も活気が戻ってきたと聞き、まさに「春」らしいパーティとなりました。
同協会の理事に私のことを「アセアン各国で講演や指導をされ、また、香港にはビジネスパートナーをお持ちで中国本土で日本製品のセレクトショップの展開やライセンスビジネスもなさっています。」と紹介していただきました。香港および本土 4都市を拠点にしていると説明すると、理事は「日本女性もたいしたものだなあ。」とおっしゃいました。いろいろな意味にとれる発言ですが、香港人の気質や本土でのビジネスを熟知されている方だけにお褒めの言葉であろうと私は素直に受け止めました。
香港ビジネスマン(特にオーナー経営者)の仕事量と決裁スピードはすさまじいものがあります。仕事仲間であっても評価は厳しく貢献度がなければものの見事に切り捨てられます。常に自分の腕を磨く、先読みをする、共に益となることを考えることが必要です。
さて、中国本土の消費市場ですが、タイ・バーツを皮切りに始まったアジア通貨危機のあと中国に目が向き始めた頃、市場としての中国も大きい、何せ日本の10倍の人口がいる、というものでした。確かに統計上そのくらいいます。そのうち、貧富の差の激しい国だから全員とまではいかなくても日本と同じくらいの市場はある、と修正されました。最近の経済誌によれば、日本人並みの消費ができるのは4000万人くらい、という数字が出ていました。私がビジネスをしている感覚ではこの数字は妥当な気がします。
以前にも触れましたが、中国というところは地域ごとに気候はもちろん、言語や文化が違います。当然、消費性向も異なります。上海で売れたものがそのまま広州で売れるかというとそうはいきません。意外や意外、少量多品種展開が必要となります。
日本人は見栄っ張りで勧められると高い商品でも無理をして買ってしまいますが、中国人はお金持ちでもなるべく安く買える方法を取ります。日本のデパートのように目抜き通りに大型店舗を構え、きれいにディスプレイをし、店員がうやうやしく接客をすれば高くても売れる、という所ではありません。また、貧富の差が激しいため、ターゲットとする購買層をいかに上手に囲いこむか、あるいは自分の持っている購買層にいかに合った品揃えをするかが大事です。
もうひとつ、日本における日本製品と中国における日本製品の位置づけは違うことを忘れてはいけません。中国における日本製品は輸入品で、イタリア製や米国製、フランス製などと競争しなければならないのです。しかも、中国のライフスタイルは西洋式ですから、和風のライフスタイルにしか合わないものは当然売れません。また、中国人は非常に流行に敏感です。ある日本の商品群を現地で市場調査したところ、「流行遅れ」との回答が圧倒的に多かったのはショックでした。日本の最新モデルを出したにもかかわらずです。おそらく長引く不況により日本のモデルが保守的になっているためと思われます。
日本の閉塞感から、新たな市場を求めて中国へという発想は間違いではありません。しかし、事前の調査や市場にあわせた対応が必要です。「市場は市場に聞け」という言葉どおりに。
河口容子
[073]客観視のススメ
確か起業して 1-2年目のことだったと思います。どうして私のメールアドレスを知ったのかわかりませんが、大手総合商社の北京駐在員を辞め、現地で起業された方から相談のメールをいただきました。私の在職していた総合商社ではないのでお顔もお名前も存じ上げない方です。「起業してから半年になるものの、1件も仕事が来ない、現地の人も雇ってしまったし、この先不安である、通訳や翻訳の仕事ならあるだろうが、自分はそんな事をするために起業をしたのではない。」という内容だったと思います。
大企業の社員にとって「去る者は日々に疎し」。よほど親しい人でない限り、辞めた直後は覚えてくれているものの、日々の仕事に追われ、そのうち在職していた事すら忘れられてしまうのが普通です。大企業にいれば嫌でも仕事は降ってきます。一方、できたばかりの企業では知名度も実績もなく、最初から商権を持っていない限り、じっとしていて仕事をもらえるわけがありません。
私はまず、会社を維持するのに毎月どのくらいの経費がかかるのか計算し、まずそれを稼ぎ出す方法を考えるようアドバイスをしました。通訳や翻訳の仕事は起業の目的ではなくても、顧客のニーズやトレンドを探すチャンスであり、本来の仕事への足がかりであり、また自分の会社をPRする機会になるかも知れないと私は言いました。ものは考えようです。