[036]アテンドの達人(2)

 今週は問題となったアテンド術の例をまずあげます。いずれも会社員の頃の話です。客先に外国人を連れて行った上司が予定の時刻を 2時間以上過ぎても帰って来ないのです。実は外出から帰ったらそのまた上司を含めて数人とミーティングをすることになっており、皆いらいらと帰りを待っていました。客先に電話をしても予定どおり帰ったと言います。そのうち事故に遭ったのではないかと大騒ぎになりました。そこへ帰って来た上司は「桜がきれいなので見せたかったので千鳥が淵に行って来た。ついでに靖国神社にも連れて行ったよ。喜んでくれてねえ。」とニコニコ顔です。
 この上司は親切かも知れませんが、先週も書いたようにあくまでも日本へ来た目的が優先です。そして多くの人を何の連絡もなく待たせるというのは非効率この上ない話です。桜を見せたいなら、最初からそういうスケジュールをどこかに組んでおく、あるいは食事を一緒にする機会があるなら、桜の見える場所を選ぶ、あるいは少し遠回りしてでも桜を見ながらレストランへ行くという方法もあります。
 もうひとつの例はやや高齢の外国人女性の会長を六本木の高級居酒屋へ招待して大顰蹙をかったという上司がおります。彼女は一切お酒を飲みません。同行した人によれば酔って大声で話す客にタバコの煙がもうもうとしていたそうです。彼女としては空気は悪いし、話すにも大声をはりあげざるを得ず、しばらく、おかんむりであったとのことです。世の中、どんな所にでも関心があるという人もいれば、なるべくマイペースを守りたいという人もいます。重責を担い、ましてや高齢であればなるべく疲れないよう「心地良いおもてなし」が必要です。

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[035]アテンドの達人(1)

 観光客のお世話をするのはガイドですが、仕事でやって来た外国人に付き添ってお世話をすることを通常アテンドをすると呼んでおります。総合商社に勤務していた24年間もそして独立してからの丸 3年間もアテンドは仕事の一部です。海外の取引先の方から挨拶状などで「一番記憶に残るのは日本滞在中にいろいろ親切にしていただいた事です」などと書いてもらうと本命の仕事ぶりをほめられたより何となくうれしくなってしまいます。アテンドの達人になろうと日々努力していることを 2回に分けて経験談をまじえながら書いてみようと思います。
まず、来日前です。実際に直接外国人のお世話をしない人であっても頼まれるのがホテルの予約だと思います。実は私にとって一番の悩みの種です。先方からホテル名の指定、あるいは予算の指定があれば問題ありません。ところが任せるといわれると困ります。高すぎるホテルを予約して内心困ったと思う人もいれば、親切心で安いホテルを取れば馬鹿にされたと怒る人もいるからです。また、宿泊費はできるだけ抑えて食事や買物にお金をかけたいという人もいれば、その逆の人もいます。私はいくつかの選択肢を用意してその理由をつけることにしています。「ここは普通のビジネスホテルですがオフィスとの往復は徒歩 5分ですので便利です。」「ご家族がご一緒なのでデパートやレストランが周辺にたくさんあります。地下鉄を使って外出されるにも便利です。」などとコメントをつけ最近はホームページも多々あるので URLを書いておいて参考に見て選んでもらうこともしています。空港まで出迎えをしない場合はリムジンバスが着くホテルをお薦めしたりもします。

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