あなたの趣味は何ですか

面接、自己紹介などで「趣味」の話題はつきものです。英語の教科書でもおなじみの会話です。確かに趣味の話をしているうちに思わぬその人の側面を知ることもありまが、日本人の趣味について疑問を感じることもあります。

1.職業と趣味

 大手企業でサラリーマンが役員になった時、社内外に公表する趣味は「ゴルフ、読書、囲碁」が役員にふさわしい趣味とされています。本人がパチンコ、競馬が好きで週刊誌程度しか読まない場合は徹底的に隠すのが掟と聞きました。
 これと似たような現象として、以前は女性の趣味といえば「お茶」、「お花」、「料理」など花嫁としてふさわしいものが選ばれ、披露宴で新婦の趣味が紹介されるのを聞くたびに自分の結婚できない理由を発見したような気がしました。

2.流行としての趣味

 テニスが流行ればテニス、スキーが流行ればスキー、ダイビングが流行ればダイビングと大半の人の「趣味」は移っていきます。特に好きではないが流行に後れたくない、友人の誘いを断れないという理由の人も多いようです。中には、特に趣味がないので取りあえず流行っているものをやっておけばどこでも手軽に楽しめ友人もふえるという「哲学」を持っている人もいます。

3.見栄と趣味

 旅行という趣味もかなりくせものです。現実からの逃避、ショッピング、主婦にいたっては家事からの開放が目的で、訪れた所の話を詳しく聞こうとしても「あちこち行ったので良く覚えていない。」と一蹴され目を丸くすることもあります。いつの間にやら旅行は親戚や友人に自慢話をするのも目的という人もふえてきて、そういう人たちはお金をせっせとためては「羨ましがられるような所」へ出かけて行きます。証拠物件として写真とお土産は必須です。

4.出費と趣味

 「書くことが好きです。」と言ってもなかなか趣味として認めてもらえません。ネクラでけちくさいイメージがつきまとうのでしょう。その僻目か、日本人が趣味として容認してくれるのはお金のかかりそうなものをさしていう傾向があると思います。「読書」は比較的お金はかかりませんが、読書が趣味と言う限り立派な書斎でも持っていなければなりません。図書館で本を借りて読んでいるようならただの「本好き」でしょう。

 これらの共通項は、他人の眼を意識して趣味を選んでいるという点にあります。映画「シャル・ウィ・ダンス」に出て来るサラリーマンたちは社交ダンスを習っていることが恥ずかしくて会社の同僚や家族に言えません。他人に迷惑さえかけなければ、趣味は個性の顕れです。堂々とやればいいではないですか。趣味を通じてふだん気づかなかったことを発見できたり、違ったジャンルの人とのおつきあいができるのもずいぶん心をを豊かにしてくれます。

 さて、「あなたの本当の趣味は何ですか?」

2001.04.27

河口容子

産業の空洞化

 「セーフガード」この聞きなれない言葉が飛び込んできたのは昨年末だったと記憶します。安い輸入品が大量に市場に出て国内の生産者が不況に陥ったからです。また最近中国産の野菜にまでこの話は飛び火しました。

 「お父さんの会社が不景気でお給料が増えないけれど、安い輸入品のおかげで家計が助かるわ。」と喜んでいたお母さんも、ある日お父さんの会社が日本で作っている商品が売れず倒産したニュースを聞き腰をぬかす、ということがおこりかねません。気がつけば衣食住はほとんど輸入品に依存しています。

バブルの崩壊以降、消費は冷え込みました。コスト削減のために少し力のある企業なら安い労働力や土地を求めて海外に生産基地を作ります。あるいは商社や小売業が1円でも安くて良いものを作れるメーカーを世界中探しまわりました。「産業の空洞化」と言われて久しいですが、技術移転のおかげで世界一品質にはこだわりを持つ日本人も喜んで買うような商品がアジア各国を中心として作られるようになりました。毎日を美しく彩ってくれる花々も何と南アフリカ、ケニア、南米と地球の裏側から空輸されているのです。

 自由貿易、非関税障壁の撤廃、市場開放が先進国の証であることは世界中の人が信じて疑いません。また、貿易のみでなく規制緩和も最近まで声高に言われていたことです。あたかもこれらの政策を逆行させるようなセーフガードがなぜいきなり論議されなければいけないのでしょう。業界団体が文句を言えば聞いてもらえるなら、文句はとどまるところを知りません。

 そもそも商品の購買権は消費者にあるのです。アジア諸国とて「安かろう悪かろう」の時代を乗り越え品質向上に努力してきたからこそ評価されて売れているわけです。彼ら(一部の日本人関係者も含みます)が努力を続けている間に日本企業はどんな努力をしたのでしょうか。

 農業については「保護」という名前のもとにほとんどが自営業、企業でたとえていうなら零細企業のままです。高齢化により競争能力はもとより競争心までなくしてしまっています。

 最近まで「何でも日本が一番」と言っていたお金持ちのお年寄りでさえ、英語のえの字も知らなくても自分の資産をいつの間にやら外国銀行に移し、しっかり外貨預金などしています。これは日本円が超低金利だからでもありますが、日本の銀行にないサービスの質を彼らが持っているからでしょう。銀行も護送船団方式のぬくぬくとした保護の下、競争力を失ってしまった産業です。

 また、ゼネコンをはじめとする下請け、孫請けという整然としたピラミッド型産業構造にも異変がおきています。いわば、日本国中空洞化が進んでいる訳で急速な国際化社会の中で淘汰が進むのは自明の理です。これは政府の産業政策の怠慢と言っても過言ではないと思います。日本として育てていくべきかけがえのないものは何なのか、競争からこぼれおちた者(企業)に転業するための援助、雇用機会を創出するために新しい産業の育成などその場しのぎではなく、将来をきちんと見据えた具体策を政府が提示していかない限り、いつまでたっても暗いトンネルから光は見えない気がします。

2001.04.20

河口容子