eメールの挨拶状

そろそろ人事異動のシーズンです。入社、転職、退職と人生の節目を迎える方もあるでしょう。結構頭の痛いのが挨拶状です。住所、電話番号、メールアドレスなどが確定しないと挨拶状の発注ができないし、新しい職場や仕事そのものに慣れるだけでも大変な時期に宛名を書き、切手を貼り、投函するというのもなかなか面倒なものです。そこで今回はeメールによる挨拶状の話題です。すでに若者やIT業界などでは当たり前でしょうが、ごく一般的な企業の中高年、特に管理職の方々へもおすすめしたいと思います。

ここ2-3年はメールによる挨拶状を多用しました。メリットは多々あります。

1)費用が安いこと。特に海外へはとても経済的。お知らせだけ、というなら同報メールで複数へ一度に送ることも可能です。当然時間の節約にもなります。
2)文面のアレンジが簡単なこと。印刷物ですとどうしてもフォーマルで大げさな文章になるか、定形の面白みに欠けるパターンになります。メールですと少しカジュアルな文面が可能です。基本パターンをいくつか作って、相手によって心のこもった一言を付け加えることが可能です。
3)相手のメールアドレスは知っているけれども自宅の住所がわからないという場合も便利です。

最大のメリットは返事をたくさんもらえることです。私は筆まめな方ですが、異動の挨拶状を郵送されて、すぐ返事を書いたり、電話をしたりはなかなかできません。メールだと返信ボタンを押すだけで簡単なせいか、筆不精と思っていた方からもちゃんとお返事がいただけました。紋切り型の返事、「今度はどんなお仕事をされるのですか」のような素直な質問、思い出をつらつらとつづっているうちに異動の話からすっかり脱線している人などと、それぞれの個性が伝わり、今までこんなに多くの方々に支えられていたのだと改めて感動、感謝したものです。それが次の人生への励みになって来ました。

デメリットもあります。うっかり削除、あるいはPCのトラブルで連絡先がわからなくなる事があります。いただいたら念のためフロッピーに保存するかプリントアウトしましょう。連絡先をレイアウトするときは印刷して切り取ると名刺サイズになるよう考えるともらった人はファイルしやすく便利です。  かつて退職された方が「辞める時は皆善人」と教えてくれました。あまりしっくりいっていなかった相手ですらお礼や励ましの言葉をかけてくれます。それを受け止め、本人も「あの人はこんなにいい人だったんだ。誤解していたかも知れない。」などと反省したりします。社交辞令と言うなかれ、まさに人生のターニング・ポイント、心の見直しポイントかも知れません。

期待にふくらむ春、ちょっぴりさびしい春、新しい人生にチャレンジする春、さて読者の皆様はどんな春をお迎えでしょうか。異動の挨拶状やメールを受け取ったら思い切り励ます返事を出してあげてください。あなたも相手も善人になれる春です。

2001.03.16

河口容子

消費不況を考える

 「消費不況」という言葉がすっかり定着し、小売業の倒産、閉店も日常茶飯事となりました。バブルの頃、安いものを買いに行くと店員に鼻であしらわれていたのに最近はどんな安いものでも親切丁寧に応対してくれます。また、スパイラル・デフレで時代が逆戻りしたかのように価格がどんどん下がり消費者にとってはうれしいものの、買いまくる元気が出て来ないのはなぜでしょうか。

 「信用失墜による不安感」。誰もが「不安」という言葉を口にします。未曾有の財政赤字で高齢化に少子化と来れば、長生きしても年金がちゃんともらえるか不安。サラリーマンはいつ自分がリストラの対象となるか、会社が倒産するか不安。頼みの綱のお金も超低金利の上に金融機関の破綻により、どこへ預けたらいいか不安。最も信頼できる相手に裏切られた感じを皆持っているのではないでしょうか。財布のひもをしめることが簡単かつ最後の自衛手段です。

 特に最近は、お金を持っている中高年層の財布をあけさせよう、ということでこの層をターゲットとしたマーケティングに目が向いてきたと聞きます。しかもこの年齢層はこれからますます人口がふえていきます。ただし、分別のついた大人は流行や宣伝などで惑わされないし、年を経るごとに趣味嗜好から財力、ライフスタイルと格差も広がっていきます。若者向けのようにワンパターンの仕掛けではモノやサービスは売れません。

 自分の例をあげると、会社員を辞めて自宅で起業したとたん、ほとんどお金を使わなくなりました。毎日通勤をしていると洋服や靴もいろいろほしくなりますが自宅がベースとなるとストックで十分です。会社の帰りに飲食や買い物ということもありません。個人的に見れば大変節約になりますが、こんな人ばかり増えたらお店はどんどんつぶれていくでしょう。

 思い出したのは、私が異動をしたり、退職をした時、職場や取引先で歓送迎会をやってくれたことです。ギフトをいただいたり、こちらからお礼をしたりと、ざっと数十万から百万円程度のお金が動いています。私自身は慣習や義理だけでこういう事をするのを好みませんが、経済効果から考えると莫大なものです。勤めていれば毎月きちんと給料をもらえるが、出ていくのも多い、つまりキャッシュ・フローが元気だと経済も元気という良い証拠です。

 高年齢層は確かに貯蓄もあり、年金も安定して入ってきます。それでも積極的に働いて得たお金でないとなかなか使いにくいものです。また孫にお金がかかるという人もいます。そこで高年齢層も大した金額でなくても何か仕事があれば、精神的にも活性化しますし、社会と能動的に接点ができ、お金を使うようになると思います。働いた分だけ全部使ってもいいではないですか。

 ひと頃「定年の延長」や「労働人口の減少を高年齢層がカバーする」という論議がさかんになされていましたが、「中高年のリストラ」ブーム以来、年齢だけで社会からつまはじきされる傾向が見られます。人間を何十年もやってきたということは何らかの優れた点を誰もが持っているはずです。それを見出して活用することは社会にとっても利益になるし、そこから得たお金が再び社会を潤すという循環ができれば消費は伸びるとふと思いました。

2001.03.09

河口容子