[202]またもや運命の出会い

 ひとりで起業をすると、つくづく不思議に思うのは取引先との出会いの不思議さです。私の場合は、商品も商権もゼロでスタートしましたので、特に海外のビジネス・パートナーや取引先との出会いはこの広い地球でめぐりあう、そしてビジネスを始める不思議さ、ご縁というものを本当に強く感じます。現在、香港とシンガポールにビジネス・パートナーがおりますが、私自身が望んだ事も、想像すらしなかった事です。香港のほうは2002年12月27日号「運命の力、お金の力」で、シンガポールのほうは2006年 1月12日号「簡単そうで難しい仕事」でそれぞれ経緯について触れておりますので、ご興味があればご覧ください。
 その他、アセアン諸国に関しては国際機関のお仕事をいただいてから、各国の貿易促進機関に知人ができるようになりました。昨年はベトナムの貿易促進機関からセミナー講師にも指名していただき、これが現地で大々的に報道されたことから、日本でもベトナム製品に関する講演を 8月上旬に行なったばかりです。また、シンガポール国際企業庁からのプロジェクトもスタートしています。 JETRO(日本貿易振興機構)も含め、政府機関のお仕事が多いというのも起業当初は考えてもみなかったことでした。
 今年から日本のクライアントのためにベトナムでのOEM生産のお手伝いを始めました。この日本のクライアントも不思議なご縁に満ち満ちています。上述国際機関の仕事仲間の女性が社長を紹介してくださったのがきっかけですが、なんと会長は私が会社員だった頃の取引先に勤務されていた方(もちろん当時はお互いに面識もなく、またこのクライアントの会社と会長の勤務されていた会社は会社はまったく接点がありません)であることを知りびっくり、また専務は私の祖父の代からおつきあいを続けているお宅の姻戚であることが判明、と不思議なことづくめでした。
 さて、ベトナムの人件費が安いことはよく知られていますが、裾野産業が未発達で工業製品の場合は素材の調達を輸入に頼らざるを得ません。そこで輸出入に慣れており、自社工場も持っているベトナムの商社に見積をお願いしたところ、中国製の 1.5倍から 2倍という価格になってしまいました。日本から見てベトナムは中国に比べると輸送距離が長く、輸送コストも日数もかかります。この商社の社長も新たに専用ラインを作るために投資をしてくれるとやる気まんまんでしたがこの価格ではどうしようもありません。
 クライアントの目的は生産基地が中国に集中しているリスクを分散しようというものです。納得できる価格でベトナムで作る方法はないか考えました。そこで思いついたのが、韓国、香港、台湾あたりのメーカーでベトナムで操業しているところはどうかという発想です。おそらく大量生産をするからベトナムに工場を作り、素材のルートもちゃんと持っているはず、という考えです。そこで一緒に製造してもらえば当然価格もかなり安くなります。
 ある日、香港の貿易促進機関のスタッフからメールが来ました。まったく別件の話です。これは神の啓示かも知れないと思い、この業種の香港企業でベトナムに工場を持っている企業を探すにはどうしたら良いか聞いてみました。ちょっと面倒かも知れないけれどできなくはない、とそのスタッフは答え、例えばたまたま今開いているリストに○○という韓国系の企業がある、というのです。その企業は香港に法人を持っているためリストに出ているらしく、アルファベットのAから始まる社名なので彼女の目にとまったようです。
 私は早速その会社にコンタクトしてみました。何と礼儀正しく、素早い回答。サンプルの送付や見積もきちんと約束の期日までに出てきます。「ジャパン・アズ・NO1」と言われた頃の日本企業のようです。しかもこの韓国企業は中国にも工場を持っており、同じオペレーション下での比較ができますし、何といっても日本向けの実績も相当なものです。またもや、運命の力がぐんぐん私を引っ張っているのを感じました。来月にはクライアントと一緒に中国とベトナム両方の工場を訪問しますが、昨年よりなんの目的もなく道楽で始めた韓国語の勉強はこの出会いを暗示していたのかも知れません。ただし、相手は英語が堪能、日本語も話せるようですので、私の韓国語は余興で済みそうです。
河口容子

[201]ジャパニーズ・ウイメン

私がビジネスをしている中国から東南アジアの国々で「日本食」は一種のステータス・シンボルです。「日本食を食べたことがある」というレベルから始まって「日本食が好き」や地元にひいきのお店を持つレベルまでいろいろです。今はニュージーランドに住んでいる友人の華人系インドネシア人 B氏は毎日家庭でも味噌汁を飲んでいるほど日本食ファン。彼がジャカルタに住んでいた頃はよくお味噌や日本茶をお土産に持って行ったものです。「どうしてそんなに日本食が好きになったの?」と聞くと「あなたに会ってから」と嘘か本当かわかりませんが私を喜ばせてくれます。
日本食だけならそこそこお金があれば誰でもトライはできますが、アジアのお金持ちの次なるステータスは日本に拠点を持つこと。名刺やインターネットのホームページに拠点をずらりと並べたところで日本が入っているのとないのとでは格が違うようです。ところが、日本は物価も人件費も高い上にそれに見合うビジネスがアジア企業にとって構築できるかというとなかなか難しいものがあります。その辺もお金持ちのステータスであるゆえんでしょう。
シンガポールのビジネスパートナーは最近アジアのマーケティング調査に関する新しいホームページを欧米向けに立ち上げ、私もそこにコラムを執筆しています。英文で連載するのは初めてです。いろいろ考えた末、「ジャパニーズ・ウイメン」というタイトルで日本女性による日本女性の消費行動を分析する内容にしたところ、「ガイジンは皆日本女性が大好き、だから素晴らしい企画」とおほめをいただき、ピンと来たのはアジア人にとって究極のステータス・シンボルは日本女性であるということです。単なる美人や高学歴で仕事のできる女性はアジアには掃いて捨てるほどいます。日本女性が彼らの永遠のあこがれであり続けるのは、2003年2月21日号でふれた「文化的であること」以外に私は思いあたりません。
そういえば、上述のB氏は「日本女性をガールフレンドに持つのが一生の夢であった」と白状しましたが、どこに行っても女性に大人気の彼が私をお姫様のようにエスコートしてくれるのも、真の日本人ガールフレンドを探すまでの予行演習かも知れません。
香港のビジネスパートナーの兄のほうも私の自慢話をするらしく、香港人のビジネスマンが仕事でどっと押し寄せて来ます。彼としては「広告効果大」でしょうが、会ってがっかりさせないよう努力をする側のことも少しは考えてほしいものです。弟のほうはよく「男の子みたい」と私のことをからかいますが、やはりエスコートの達人である日、香港の水たまりをハイヒールでまたごうとした私の腕をそっと支えてくれました。彼はぴかぴかに磨いた靴で水たまりの中に立ったままです。同行の香港人の女性秘書がたまらず走って逃げたくらいでめったにない光景だったのでしょう。弁護士であり、上場企業の買収もしてしまう投資家がこのような事をしてみたくなるのも私が日本女性であるおかげのようです。
きちんと仕事をしている限り、日本女性であることは国際ビジネスの場ではかなり得をします。また、海外の男性のほうが女性と一緒に仕事をするのに慣れているせいかこちらも気楽な面もあります。アジア諸国で「日本」という言葉に戦争の名残を感じる人もいるかも知れませんが「女性」は平和なイメージを与えます。ありがたいと感じる反面、傲慢になったり、甘えてはいけないと強く思います。また、海外でだらしない格好で歩いたり、無作法な日本女性に対する彼らの目は日本人以上に厳しいということは忘れてはいけません。
最近、日本の化粧品会社のヘアケア製品のコマーシャルが好感度NO.1を維持していますが、さまざまな個性を持つ日本女性たちの生き生きとした姿が実に印象的です。
河口容子