新型インフルエンザに日本列島がおののいている頃、感動的なメールをいただきました。「日本で新型インフルエンザが発生し、 4,000校も閉鎖したと聞き驚いています。先生はお元気でいらっしゃいますか?ハノイで一度しかお会いした事がないのにいきなりメールをして失礼とは思いますが様子を教えてください。」
送信者はベトナムのニンビンにある商社の役員でした。同氏とは2006年のハノイでのセミナーで名刺を交換させていただきましたが、 200~300 人の方がセミナーに参加されましたのでほんの一言二言の挨拶だけだったと記憶します。成長著しく、目まぐるしく変化をとげるベトナムにあって 3年近い時を超えてわざわざ思い出してくださるとは本当にありがたいと思いました。私はお礼とともに日本の様子を取りまとめ、ひょっとして仕事柄日本の状況を継続的に知りたいのかも知れないと思い NHKの英文サイトの URLも教えておきました。ニンビンはハノイ市から約 100kmのホン河の河口にある省ですがこんな奥ゆかしい人物をはぐくむ場所をぜひ訪れてみたいと思いました。
次は2009年 3月 5日号「春の別れ」に出てくる元ベトナム大使館の商務官からのメールです。エリート中のエリートの彼ですが真面目すぎて要領の悪いところもあり、日本で生まれた二人のお子さんがベトナムの環境に慣れたかどうか心配で近況をたずねたところ、いただいた返事です。「ご心配いただきありがとうございます。家族は新生活とハノイの環境に慣れました。息子は保育園に通っています。日本語はもう忘れてしまい、日本語の歌 1曲が歌えるだけです。娘は 9ケ月ではいはいをし始めました。妻も働き始めたのでお手伝いさんを雇いました。みんな忙しくてあっという間に 1日が過ぎていきます。通産省では国際経済協力の仕事を担当していますが、副局長になる予定です。帰国したばかりなので数ケ月待たなければいけませんけれどね。早くハノイにいらしてください。お目にかかれるのを楽しみにしています。」日本人は公私ともに忙しい、あるいは自分が出世してしまったら、返事なんていちいち書かないという人が多いようですが、彼の律儀さは健在でした。
香港のビジネス・パートナーとの仕事の話はほとんど夜の11時から 2時の間にチャットを使って行うケースが多いのですが、「今日は眠いんです。朝の 4時過ぎまでマイケル・ジャクソンの追悼式典をライブで見ていましたから。ジャクソン・ファイブの時代のマイケルを覚えていますか?」「もちろんだとも。ほとんど全部歌えるよ。」ビジネス・パートナーは私より少し年上ですが、よくも 6年以上も一緒に仕事をしていると自他ともにあきれるくらい性格が違う、というか奇人変人大会のような組み合わせです。音楽、映画、本、歴史が共通の趣味でこういうちょっとしたやり取りを積み重ねる事により長続きしているように思います。
比べてみると日本人ビジネスパーソンからのメールはほとんど通りいっぺんの仕事の話ばかりです。表現下手なのか余裕がないのかわかりませんが、親しい相手ならもう少し相手を思いやったり、楽しませる可愛げがあったほうが好感を持たれ仕事でもプラスになる気がします。
河口容子
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香港向けの輸出が一段落、ライセンス・ビジネスもライセンサーの返答待ちという事で久しぶりに東京都中小企業振興公社が主催するハノイ投資セミナーに行ってみました。ハノイ特別市への投資関連は東京都がタイアップしてサポートする体制になっているのです。主催者名からして中小企業からの参加がほとんどでしょうが、雨にもかかわらず満席に近い出席者にハノイ市計画投資局のファン・バン・クォン副局長が感動しておられました。
ハノイ市は2008年10月23日号「危機を克服するベトナムと新しいハノイ」でふれたように昨年8月に周辺のハテイ省などと合併し、世界の首都としては17位の大きさになりました。ハノイはもうすぐ遷都1000年を迎えるだけあって4088の歴史遺跡と10の博物館をかかえるアジアの観光都市第 2位、世界ランキングでも13位で、昨年は 130万人が海外から観光に訪れています。その割にはホテル数が少なく、ハイシーズンには私のお気に入りのブティック・ホテルは 1泊約 2万円になってしまいます。現地の物価と比べると異常な気がします。
インフラ整備も各国の ODAなどで着々と進み、昨年の合併によりハノイ市内にハイテク工業団地 1ケ所、工業団地が28ケ所になりました。 JETROの調査による労働者の賃金を比較すると、北京とクアラルンプールがほぼ同じ、一段下がってマニラとバンコク、深セン、ニューデリー、ジャカルタがほぼ同じでベトナムは月 1万円前後とかなり優位性があります。ただし、近代化とともに賃金上昇は避けられないので、識字率の高さ、理科系のIQの高い国民性、手先の器用さ、対日感情が悪くない、中国や他のアセアン諸国双方に近いという地理的条件をあわせて進出戦略を立てる必要があろうかと思います。
私自身は全国レベルでの一人あた りGDPが1000ドルを超えたこと、若者の比率が高い国家で現在8600万人の人口がすぐ 1億人になるであろうことを予測すると非常にポテンシャルの高い市場と言えます。私の取引先は日本製の著名ブランドのベビー用品をコンテナ単位で輸出を始めています。
もうひとつは外務省の統計で重要なパートナー国として一番に日本をあげたのはアセアン諸国では現在も今後もベトナムとインドネシアだけです。フィリピンは現在は米国、次に日本の順ですが、今後については米国が大幅に減ったため日本がトップになりました。タイはますます中国依存が強くなる傾向にあります。
会場で先日私の講演に参加してくれたベトナム人男性と会いました。彼はハノイ市の出身だそうで有名大学が集中するハノイですので「大学はどちらへ行かれましたか?」と聞くと「東京農業大学です。」と答えられ思わず笑ってしまいました。日本語をマスターするまでは英語で授業を受けていたそうです。新婚さんで奥さんは留学仲間、夫婦そろって日本企業で働いています。ちなみにアジアでの女性の社会進出率はベトナムがだんとつトップで男性 100人に対し女性94人。女性の企業経営者は珍しくありませんが、政府機関は女性の管理職が少ない気がします。軍~共産党~政府という伝統的に男性優位の特権階級に優秀な男性が集中するからかも知れません。
河口容子
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