[349]心の伝わるメール術

 新型インフルエンザに日本列島がおののいている頃、感動的なメールをいただきました。「日本で新型インフルエンザが発生し、 4,000校も閉鎖したと聞き驚いています。先生はお元気でいらっしゃいますか?ハノイで一度しかお会いした事がないのにいきなりメールをして失礼とは思いますが様子を教えてください。」
 送信者はベトナムのニンビンにある商社の役員でした。同氏とは2006年のハノイでのセミナーで名刺を交換させていただきましたが、 200~300 人の方がセミナーに参加されましたのでほんの一言二言の挨拶だけだったと記憶します。成長著しく、目まぐるしく変化をとげるベトナムにあって 3年近い時を超えてわざわざ思い出してくださるとは本当にありがたいと思いました。私はお礼とともに日本の様子を取りまとめ、ひょっとして仕事柄日本の状況を継続的に知りたいのかも知れないと思い NHKの英文サイトの URLも教えておきました。ニンビンはハノイ市から約 100kmのホン河の河口にある省ですがこんな奥ゆかしい人物をはぐくむ場所をぜひ訪れてみたいと思いました。
 次は2009年 3月 5日号「春の別れ」に出てくる元ベトナム大使館の商務官からのメールです。エリート中のエリートの彼ですが真面目すぎて要領の悪いところもあり、日本で生まれた二人のお子さんがベトナムの環境に慣れたかどうか心配で近況をたずねたところ、いただいた返事です。「ご心配いただきありがとうございます。家族は新生活とハノイの環境に慣れました。息子は保育園に通っています。日本語はもう忘れてしまい、日本語の歌 1曲が歌えるだけです。娘は 9ケ月ではいはいをし始めました。妻も働き始めたのでお手伝いさんを雇いました。みんな忙しくてあっという間に 1日が過ぎていきます。通産省では国際経済協力の仕事を担当していますが、副局長になる予定です。帰国したばかりなので数ケ月待たなければいけませんけれどね。早くハノイにいらしてください。お目にかかれるのを楽しみにしています。」日本人は公私ともに忙しい、あるいは自分が出世してしまったら、返事なんていちいち書かないという人が多いようですが、彼の律儀さは健在でした。
香港のビジネス・パートナーとの仕事の話はほとんど夜の11時から 2時の間にチャットを使って行うケースが多いのですが、「今日は眠いんです。朝の 4時過ぎまでマイケル・ジャクソンの追悼式典をライブで見ていましたから。ジャクソン・ファイブの時代のマイケルを覚えていますか?」「もちろんだとも。ほとんど全部歌えるよ。」ビジネス・パートナーは私より少し年上ですが、よくも 6年以上も一緒に仕事をしていると自他ともにあきれるくらい性格が違う、というか奇人変人大会のような組み合わせです。音楽、映画、本、歴史が共通の趣味でこういうちょっとしたやり取りを積み重ねる事により長続きしているように思います。
 比べてみると日本人ビジネスパーソンからのメールはほとんど通りいっぺんの仕事の話ばかりです。表現下手なのか余裕がないのかわかりませんが、親しい相手ならもう少し相手を思いやったり、楽しませる可愛げがあったほうが好感を持たれ仕事でもプラスになる気がします。
河口容子
【関連記事】
[345]メールは生活の一部
[330]春の別れ
[313]マナーブームと可愛げ
[289]Thank You レター