中国は経済活動に支障が出るほどの何年ぶりかの大雪。中国人にとって待ちに待った旧正月(春節)を目前にしてのまさに春の雪です。香港のビジネスパートナーは私財を投じて貴州省の少数民族の保護活動にこの1年ばかり専念していますが、その貴州省でも10数人死者が出たとのニュースを聞き、心配になりました。何せ、その少数民族の地域は形状は違うものの白川郷と奈良の神社仏閣を足したような建物が点在する山間の集落で、省都の貴陽から車で 6-7時間と聞いていたからです。IP電話のチャットで「大雪との報道ですが、そちらに被害はありませんか?」とたずねたところ「心配してくれてありがとう。2週間、交通機関も通信も遮断されたよ。僕は大丈夫だけれどスタッフや住民たちが心配。」との事でした。
一方、ベトナムにある韓国系工場の韓国人担当者はベトナムのテト(旧正月)の間は韓国のテグ市にいるからと連絡をくれました。緊急用にと携帯電話の番号を教えてくれましたが、私のIP電話のIDを教え、これなら電話も無料だし、チャットもできるからと言うと、すぐ用意ができたのか先方から「こんにちは」とチャットが入って来ました。「こんにちは。そちらは寒いのですか?」と私。「ええ、雪が降っています。」温暖化という言葉が嘘のように今年の北東アジアは雪が多いようです。
こんな会話をやり取りしてから出かけたのはアセアン諸国のギフトグッズの商談会です。墨絵色の冬景色の街から熱帯の色合いの中に飛び込むとそこはもう南の国で思わず笑みがこぼれます。ここ数年、チープでかわいいというアジア雑貨ブームが一段落したかの感がありましたが、商談会場にはまた熱気が戻ってきました。カンボジアやラオスの布ものなど、決して安くはない商品が人気を集めていました。タイ、ベトナムにしてもデザイン、品質ともにブラッシュアップされた商品たちが並んでいました。各国の経済成長とともになぜかアジアくささが抜け、旧宗主国のヨーロッパ人好みの品の良さ、ほどよくコントロールされたデザインと色あいを持つものがふえたようです。日本の業者も中国製一辺倒からより付加価値を求めて、また文化や歴史の香る商品を求めてアセアンの商品へ戻って来ているようです。思えば、自然素材を使い手で作るものは「究極のエコ商品」でもあります。
懐かしい出会いはブルネイの女性起業家です。1年ぶりくらいでしょうか。彼女とはブルネイで2度、東京で3度会ったことになりますが、いつも真面目な話をしているにもかかわらず漫才コンビのようになってしまい、思わず周囲の人たちに爆笑されてしまうことがあります。「誰か私たちの写真を撮って」という彼女に「僕が」「私が」と各国のブースからかけ寄ってきてくれるのはアセアンならではの光景です。彼女のオリジナルの刺繍は絶妙な色バランスといい、特にイスラム的な抽象柄のデザインの良さにいつも思わず見とれるのですが、それもそのはず、日本のグッドデザイン賞の受賞者でもあるのです。帰国後、彼女の参考にと思い、いろいろアドバイスのメールを送ったところ、「本来はアドバイスをいただいた事のそれぞれをチェックしてからお返事をすべきなのでしょうが、うれしくてたまらないので先にお礼を書きます。」とすぐ返事が来ました。刺繍の天才、猛烈な勉強家でもありますが、この天真爛漫なところも彼女の魅力のひとつです。
河口容子
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先週号「中国の輸出規制策と日本の中小企業」の文末で触れたメコン地域投資促進セミナーに行って来ました。メコン 5ケ国、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの外相がパネリストとしてそろって登場、歓迎挨拶は高村外相というものです。寒のさなか朝 9時からの開始にもかかわらず大盛況で、たまたま某大手商社の部長と隣り合わせました。私がベトナムに行く機会が多いと話すと「ひとつわからないことがあるのですが、どうしてベトナムは米国に賠償請求をしないんでしょうかね?実に大らかな国民ですね。」「それがベトナムの品格と言いましょうか。プライドでしょうね。第二次大戦中に日本軍にも 200万人犠牲になっていますが、外交上一言も口にしたことがないそうですから。自分たちが悲惨な目にあったのを餌にお金なんかもらいたくないのでしょう。」
「ところで昨日、日・メコン 6ケ国外相会議があったのにほとんどの全国紙は伝えていないですね。今やアセアン関係ならメコン地域が最大のトピックスなのに。」と部長。このセミナーの前日に日本・ラオス投資協定が署名され、またカンボジアーラオスーベトナム「開発の三角地帯」のプロジェクトに日本アセアン統合資金から約2000万米ドルが使用されることも決まりました。ほとんどの読者の方は何もご存知ないことでしょう。一般メディアが取り上げないからです。2005年の 2国間 ODAの実績は上記 3ケ国合計で約 800億円、原資はもちろん皆様の税金です。
「最近のメディアは時代を見る目がないというか、売上第一主義に陥っているというか、中国の輸出規制についてだってほとんど何も報じてはいないではないですか?中国のおかげで生き延びた中小企業には大打撃でしょう。」と私。「それは自業自得というものですよ。無手勝手に出て行っただけですから。だまされて損している人も多い中、儲かっただけでも良かったと思うしかないでしょう。」と部長。私自身が大手商社に24年も在籍したのでよくわかるのですが、大手企業は奇妙に政府と似たところがあります。要は体力のない中小企業はそろそろ退場しなさいという事なのでしょう。
このメコン地域にすでにどのくらいの日系企業が進出しているかというと2006年の統計でタイ 1,294社、ベトナム 604社、ミャンマー58社、ラオス38社、カンボジア35社です。在留邦人数でいうとタイに40,249人、ベトナムに 4,754人、ミャンマーに 605人、ラオスに 442人、カンボジアに 878人。メコン 5ケ国への日本人渡航者数は年間約 189万人です。予想より多いと思われた方が多いのではないでしょうか。
「拡大」メコン地域には上記 5ケ国に中国の雲南省、広西省も含まれるので西ヨーロッパとほぼ同じ面積に約 3億2300万人の人口がいます。2015年にはこの地域が道路網、通信網、電力網できちんとつながるように計画されています。単に人件費が安いから生産拠点として利用する、というのではなく、市場としてもとらえられる企業、単一国でなく複数国での特徴を生かした展開ができ、その地域にとって感謝され必要とされる企業がこれから勝ち残っていくような気がします。前段で述べた数字からも小規模企業であっても日系企業や在留邦人のためのサービス業は需要があると思われます。
河口容子
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