先週号でご紹介した「石垣島の唐人墓」の話を読んだ私がまず感じたことは、人道主義よりも政治体制によって歴史教育も変わる、つまり欧米にたてついた話は隠されてきたということです。たとえば、インドネシアに残った2000人ほどの旧日本兵がオランダからの独立戦争をインドネシア人と一緒に戦った話を知る日本人は少ないと思います。また、日本のシンドラーと呼ばれる故杉浦千畝元リトアニア領事代理はナチスの迫害から逃れようとするユダヤ人のために当時日本の同盟国であったドイツにそむき人道主義から日本を通過するビザを発給し続けました。救われた命数千人。日本に戻った杉浦氏は外務省から解職されます。あの鈴木宗男によって名誉回復がなされなかったらこのエピソードもユダヤ人は知っているけれども日本人は知らない歴史になっていたかも知れません。
マスメディアから発信される情報はあまりにも大量で一見あらゆる事を網羅しているかのように思えますが、それがすべてなのか、真実なのか、最近疑問を持っています。人間の行いには簡単に善悪の見極めがつくものもありますが、両面を持つものも多々あり、また世界が広がった分だけ、一挙手一投足が複雑な意味を持つようになりました。