[075]トゥーレーヌワイン白書

フランスでワインを産出するところならどこでもあるのがワイン博物館。ワインの知名度、生産量を問わずに「オラが村のワイン自慢」というやつは治まらない。パリだって今ではもうモンマルトルの丘にロマネコンティの畑よりも小さい畑でしか栽培していないのに16区パッシーにはしっかりと「ワイン博物館」なるものが存在する。
パリのそれはちとイマイチのような気がするけれど、トゥールにあるワイン博物館はわが、ブルゴーニュ地方ボーヌにあるものにも負けてない。というよりもボーヌとは違った感じでこれもまた面白い。
チリやオーストラリアの新大陸ワインがお手ごろで手に入るようになったことやワインの健康促進が益々ワイン人口を増やしワインを目的とした旅行者も多くなっているようで。カーブ巡りもかなり定着して来ました。ワインは奥が深いと言うけれどその奥深さを理解するには飲むことだけでなく、ワインと人々の関係、ワインがいかに人々の生活に密着したものであるか、文化となっているかをもっと知ってもらいたい。


そもそもワインは宗教儀式で用いる目的で栽培されていたのでブルゴーニュやトゥレーヌのように修道院が巨大な勢力と領地を持っていた事に銘醸の秘密がある。18世紀のフランス大革命、19世紀のフィロキセラ害虫のために畑が荒廃し苗が南仏や新大陸に移植されて今でこそ天候と土壌条件が合えばどこでもワインが作れるようになったけど、やはりフランスは郡を抜き出ている気がする。
ブルゴーニュのワインとロワール、特にトゥレーヌで栽培される赤ワイン品種のピノ・ノワールや白ワインのソーヴィニヨン・ブランは同じ品種、でもその仕上がりはかなり違う。どちらも郷土料理に合っておいしい。ワイン博物館ひとつとってみてもその展示品はやはり嗜好が違う。違うから面白く、違うからまたひとつワインに関する知識と興味が深まる。ボーヌのワイン博物館が栽培技術やその歴史に趣を置いているのに対し、トゥールではワインとそれを飲む人々にテーマがあるようだ。
数日間の滞在でロワールワインをあちらこちらで飲みまくった。試飲もあるけどブラッスリーで郷土料理に合わせても飲んでみた。私が気に入ったのはアゼー・ル・リドー城傍のワイン販売所で買った1999年産のTouraine Azay-le-Rideau(白)とトゥールの市場で買ったBIOワイン、2002年産のBourgueil(赤)いずれも5ユーロ位なのに私を唸らせた。ディジョンのワイン好きな友達に飲ませて一緒に満月に向かって叫ぼうっと。
夢路とみこ