[121]私のわらじは多足かな

私の仕事は二つ、滞在型観光船である弊社の船、ホテル・バージ旅行の市場開発と販売を含めたマーケティングそして日本から団体乗船客があるときにコーディネーターとして船に乗船しこまごまとした仕事をする事。弊社には日本人私一人しかいないからとりあえずは二束のわらじで仕事をしていますが、船に乗るとそのわらじが3足にも4足にも増えます。
船でのお仕事。朝6時起床。お粥作りで朝が始まります。欧米風朝食ビュッフェに日本のお粥は箸休めになると好評。船のクルーたちも時々相伴しています。それも牛乳と砂糖を入れて甘くして。
お客様が観光に出かけるのは午前か午後のどちらか、残りの半分はクルーズ時間。ワイナリー見学時の通訳以外は添乗員さんが通訳されるので私はお留守番。その間に食事のメニューや明日の予定表の翻訳と配布の準備。メニューの翻訳は食いしん坊の私の腕の見せ所。シェフが頑張って美味しいものを作るのですから、それに相応しい日本語でお客様の食欲をそそらねば。


私達の船ではお食事の時に出すワインやチーズを解説付きで紹介します。6泊7日で食べるチーズと飲むワインは12種。それぞれの地方特色豊かなセレクションで出しますが、チーズには面白い纏わり話があり、ワインには葡萄と土壌の違いが様々な味模様を編み出します。普通のレストランではないサービスを提供するのが私達の仕事。
朝6時に始まる私の仕事は、食事の後の皿洗い、ダイニングの後片付け、食事の時間の通訳が終われば配膳もします。日本人の味付けに馴れていないシェフのために味見をして、盛り付けの量に口出ししてお肉の焼き方から付け合せの野菜の種類まで監督するのも私の仕事。
ディジョンでは東京のOL格好の私ですが、船上ではポロシャツにズボン、足元は滑らないように頑強なシューズで戦闘態勢ばっちり。船は階段が多く一日中踏み台昇降。フェンスを越えて船長の操縦室へ行くのでハードル走する私を30代後半だとお客様は誰も思わない。ちなみにうちの船のクルー、平均年齢は30 歳。夜各自の仕事を追えて停泊先の町の繁華街で羽を伸ばしても翌日の朝7時にはしっかりと船に戻ってスタンバイ。
クルーの仕事若くないとだめだわ。シーズン中9ヶ月間外国人同士が寝食を共にしてはちきれる若さで語学も恋愛も失恋も充分に習得して大人になってゆく。もし、私が30代前でワーキングホリデーの資格があったらきっとクルーという仕事に挑戦しただろうと思う。
夢路とみこ