我が町ディジョンはフランスの中でも良しに悪しきにも知られている町です。まずはマスタード、これを世に知らしめしたブルゴーニュ大公よりもこの薬味の方が有名かも。そしてオテル・パティキュリエールと呼ばれる一連の古い館。ファサードや壁に綴られるその彫刻や色取り取りのタイル屋根はこの町の特徴。その様子はまるでパリ16区パッシーを思わせます。しかし首都以外でこれだけの古い館が密集している所はフランスでも珍しくディジョンは建築面からしても多くの観光客を惹き付けます。
ブルゴーニュ大公家のお膝元にあった町だから昔から貴族が多く周囲に住みまた裁判所や政治家が住みました。オテル・パティキュリエールとはそんな人達の住居だったようです。これらの館の大半が中庭を持ちそこが見所なのですが、その殆どが私有地で大きな扉に閉ざされています。外観を眺めるだけ。でも毎年秋の国家遺産の日(9月中旬の週末)だけは一般人に解放され中に入る事が出来ます。でも一部の館は通常でも中庭まで見学可なのもあるのでそれはディジョンの観光局で問い合わせをして見て下さい。また大公宮殿の裏にある観光局の支局もまたオテル・パティキュリエールの中を使用。とても素敵なので必見。
建替えの建築基準が厳しいフランスでは景観を守ると言う理由からこれらの館の美しさに反してその住み心地はかなり悪そう。レオナルド・ダ・ヴィンチの時代から螺旋階段がこの国ではファッションであり、それは美しいフォルムだけど実に昇り難い。パリなんかだと螺旋の真中にエレベーターがある所も多いけどディジョンはまだまだ普及してないのか狭すぎるのかとにかくない。
この美しい館のアパルトマンに住む友人を訪ねて行くのは大変。螺旋がきつく長いので食事に招かれワインを持参する時はボトル2本が限界。機能的という造りではないため、生活するには大変そうだけどやはり芸術家のエスプリを刺激するらしく私の周辺でもこの手のアパルトマンに住むのはインテリ系かアート系。
私自身、オテル・パティキュリエールやそのグルニエ(屋根裏部屋)を外から見上げる度に出世したらこんな所に住みたいと思うものの、食事の招待を受け実際に中に入る度に「今のアパルトマンでいいや」と開きなおります。オテル・パティキュリエールの美しい彫刻の数々を楽しむにはミニの双眼鏡かオペラグラスがあればとても役立ちます。私もこの町の散歩はミニ双眼鏡といつも一緒。
夢路とみこ