[064]チップの話(2)

一人旅する時はいつも2つ星ホテルを利用。設備の当り外れは仕方ないけれどサービスの良し悪しはチップによって大きく変わるもんだといつも思います。連泊の時にチップを忘れると部屋の掃除がイマイチだったり、石鹸がなかったりする。2ユーロでも忘れずに置いておくとかなり快適に用意してくれる。サービスとは無償の奉仕である事が常識の日本から比べると大きなカルチャーショック。
先シーズンから日本人団体乗船の際は私もクルーメンバーの一人として乗船。1週間程度の乗船ですが数回やっただけで年間分のクタクタ。クルー業務の大変さとチップ効果を大きく体感させられました。お客様は高い旅行費を払って来ているのだから元を取るのに必死。「ガーデニングが好きでね、今日の観光地で本を買ったんだよ。仏語読めないからね、訳して読んで聞かせてよ」とか、真夜中に叩き起こされて緊急事体発生?!かなと思いきや「トイレの電球が切れたから取り替えて」などなど苦笑に耐えない。


通常のホテルやレストランと違い、うちの場合6泊の宿泊、毎回の食事、半日はクルーズだから船内。いつも一緒にいるので情も移るし、ちょっとしたわがままも出てきます。少しでも快適で楽しい旅行にしてもらおうとクルーも私も頑張りますが、最大の励みとなるのはチップ。
EU統合後、越境労働者が多くうちの会社でも人件費の安い英国でクルーの大半を採用、不足分を国内で賄います。英国採用と仏国採用ではそれぞれの国の最低賃金が違うので基本給に格差があります。これはクルー同士の喧嘩の種にもなっています。人事部は英国採用者に「チップで足りない分を埋める様に頑張れ」と諭しています。この様な例はうちの会社のみならずフランスにある数多くの観光業者、特に私達日本人や外国人が多く利用する観光施設では悩みの種です。
サービスは無償として考える私達日本人と有償であると考える欧米人。郷に行ったら郷に従えと言うけれど中々これを私達日本人が理解するのが難しく、チップの習慣がない事を現地側に理解させるのも容易じゃない。この問題について問われると私はいつも逃げたくなる。払う事を強制出来ないし、チップを当てにして張りきる同僚に「習慣がないからないわよ」とも言い辛い。
日本と違い残業手当てというのがない上に最低賃金が低いこちらのサービス業従事者にとり僅かな額でも貰ったそのチップでコーヒーを飲むとき私達もらう側の疲れが癒されるのです。
夢路とみこ
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