[136]夢は叶えるためにあるもの

突然解雇されてから4ヵ月後近く、労働許可証が切れる直前に滑り込みセーフで再就職にこじつけた。再就職先は前の会社のライバル船会社。紹介してくれたのは前の会社の副社長。船が好きでブルゴーニュが好きで、アル中でも船の沈没で死んでも良いからここで船の仕事がしたいと言うことを知っていた彼は、私から船を、ブルゴーニュを取り上げたらただの「おばちゃん」になってしまうことを危惧してくれたようだ。
解雇直後、「とみこはこれからどうするんだ。日本にはもう帰る場所ないんだろう?」と心配してくれた。そう、両親が他界して、持ち家を処分してスーツケース一つでディジョンに来た。ここで自分の人生を形成するつもりでやってきた。だから毎年帰国しても帰る家がないからホテル泊まり。日本は故郷であっても故郷でなくなりつつある。だから意地でもこのディジョンに居座らなければ。運河と葡萄畑が心の拠り所。
副社長がライバル会社に電話してくれた。「もう知っての通りうちの会社買収されてね、米国以外の市場には船を卸さないんだよ。でね、日本市場担当している者も解雇されたんだ。お宅は日本市場興味ないかね。」と。電話先の相手は再就職先のブルゴーニュ支社支社長のところ。この会社も実は米国資本の会社で本社はボストン近郊のプリモス。本社でマーケティングを行い、ブルゴーニュは船の運営のみ。ここも米国市場以外は全く手をつけていないというクルーズ業界お決まりの米国市場中心型。


1週間後に米国本社の社長から電話をもらった。「君ね、うちで働くとしたら給料幾ら欲しい?」と単刀直入。とってもアメリカン。私も負けずにアメリカンで「XXXユーロ、それ以下は嫌です。」この返答が社長に私の米国経を気づかせたらしい。それから9月初旬のプリモスでの初対面までの時間、ほぼ毎日のようにメールと電話でやり取りをしてお互いの仕事のペースを確認。一時は「もしかしたら君はうちが探している人材ではないかもしれない」と拒否されかかったことも。でも私は負けなかった。「御社が日本市場に参入したいのならその打開策は私です。」と大見栄張っちゃった。
昔観たアメリカ映画に「ラストコンサート」があります。この作品の中で「夢は叶えるためにあるもの」という台詞があり、私のモットーのひとつです。私の夢ですか?フランスに住んで、アメリカ人のボスの下で働いて、スイス並みの給料をもらうこと。夢の実現まであと一歩。
夢路とみこ
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