私がその昔、香港勤務を契約満期前に放棄した最大の理由が「食事が合わない」こと。海外就職に憧れる人からするとなんと幼稚でなんと贅沢なそしてけしからん理由だと帰国後によく言われました。私にとって「食生活」とは犯しがたい牙城。これがまず生活の基本であり、これを犠牲にしてまで叶えたい願いは全くなし。いつも美食でなくても良い、でも好きなものに囲まれて暮らしていたいというのが正直なところ。
私の舌が覚えている香港、飲茶以外はみんなあんかけ、気力まであんで覆われてしまった。箸休めにしていた和食は高級料理でパスタは茹で過ぎ。この国にはアルデンテの翻訳がないのかと思うくらい。自由貿易でワインは安いのに見合うフレンチがなかった。とどのつまり、私の舌が覚えている香港は広東料理以外はあまり美味しくなかったということ。
我が美食の里ディジョンにも同様のことが言えつつあると私の舌は証言する。フランス料理ならおふくろの味から三ツ星シェフまでどこをかじっても美味しいのに、フレンチ以外となると美味しいのを探すのに一苦労。つまり、フランス人のプライドがフレンチを凌ぐ美味しい外国料理の店が出るのを阻止しているのではないかと思うほど。
そんな中、私がフレンチからの休息に行く店Version Latinは気さくなイタリアンの店。イタリアンはそれほど好きでない私でもこの店によく通うのは安月給だからという理由だけではなく、この店のブルゴーニュ風ピザ、つまり、エスカルゴがトッピングされているピザが大好きで通う。もちろんパスタも肉料理もいける。ワインだって美味しいよ。そしで堂々とディジョン屋内市場の前に店を構えているというのが気に入った!
フランス美食のメッカ、デイジョン、それもその心臓部の市場の前に堂々とイタリアンの店を構える、その勇気にあっぱれだけど、味で周囲を納得させる、値段で私を納得させる。大したもんだ!
そして最近、大阪ですてきなイタ飯屋に案内された。食い倒れの町、大阪でイタ飯?大丈夫?料理はもちろん私が感心したのは配膳をやっているオーナーのイタリア人兄弟。流暢な日本語で、そしてここはイタリアかぁと思わせるくらいの女性客へのもてなしがあっぱれ。値段には味のみならず雰囲気やもてなしという価格も入っているんだと再認識。
プライドの高さが違いを楽しむということから遠のいた世界をつくるのかもしれない。私も反省しよっと。
Version Latin 16 rue Odebert 21000 Dijon 03.80.30.06.12
ピッコロモンド ぐるなび
夢路とみこ