〈前回の続き〉
ここで映画のワンシーンなら見知らぬ男女が相席になって恋も芽生えるのでしょうが、現実では、ベタベタカップルの隣で食事中は一口食べたらキス、一口食べたらお手てニギニギという事や、口には戸が立てられないオバタリアン二人組み(外国語だったら尚更の騒音)ってのもある。
気分が悪くなって席を立ちたくなるのは悪臭のする人、国に寄っては食文化の違うせいか体臭がものすごい人もいるし、またそれ以外では観光で来ている日本人で外国で日本人に会いたくないという態度が見え見えの人も相席にはなりたくないですね。むしろ現地に住んでいる人と相席になってラッキーと思ってくれる人であればこちらも親切心を持って観光アドバイスをしてあげる気にもなれるんですけど。とにかく私たちは上の階に席を取ることになりました。
巨大ブラッスリーとなるとギャルソンの数も多いけどテーブルの担当もしっかりと決まっているので、自分のテーブルの担当でないと何もしてくれない。メニューも持ってきてくれなければ、注文も取りに来てくれない。またギャルソンがフレンドリー過ぎても困りもの。あちらこちらのテーブルで愛想を振りまいている分、配膳は遅いわ、注文は揃わないわで。
サービス料込みとなっていてもそれが給料にそれ程影響を及ぼさないので彼らにとってはぐうたらしていても、一箇所のテーブルで愛想振りまいていても給料はほぼ一緒。だったら好みの女性客のテーブルでデレーとしたいギャルソンはデレーとしています。ウエイトレスもそう、知り合いが来ると仕事そっちのけでお喋りに花が咲いています。年配のウエイトレスは配膳そっちのけで話し相手をするのも仕事の一部だと本当に思っているからどうしようもない。これもこの国の食文化と言えばそれまでなんですけど。
上の階から下を眺めるとこのブラッスリーの巨大さが実感できます。でも上に席を取る利点はこの「実感」だけでしょうね、たぶん。だからやっぱり下の席の方がいいわ。この店は料理を目当てに来る人はいるのでしょうか。でも、この店の売りは昔ながらの大衆食堂料理とその雰囲気と懐かしのメニューじゃないかな。そして単品のどれもが安く、前菜+メイン+デザートを食べてもシャンゼリゼのお洒落な店のメイン一皿よりも安い事がメリットです。
こちらもご参考にどうぞ
http://blogs.yahoo.co.jp/beaucaillou7/58033659.html
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夢路とみこ
[327]カルチャースクール(続き)
朝夕と今は掛け持ちで2つの会社に出勤し、空いている時間にマーケティングや翻訳、そしてときどき観光アテンドの仕事もするのですが、この中で一番大変な仕事は観光アテンド。私の場合、個人ツアーを引き受けることが多く、また雇われる目的も何か特定のものに興味がありそれについて説明しながら同行するという事が多いのです。
良く受けるのが、私にとっても合っている「食べ物系」のお仕事。ワイナリーを見学したり、チーズを買いに行ったり、減少しているものの時にはお星様レストランへの同行もあったりします。そこだけ話すと大抵の人が羨ましがってくれますが、何時間もの間、ワインやチーズ、フランスの食文化、テーブルマナーについて話をしなければなりません。お客様の注文を通訳するだけではなく、彼らの質問に答え、日本との比較を示し、そして「この人を雇って良かった」と思ってもらえるような情報提供もしなければなりません。これが私の考える「アテンドのお役目」なんですが。だからゆっくりと美食を味わっている暇がない、美食ものどを通るのみ、美味しいとは思うものの味わう時間がない!
こちらから提供する情報や知識の蓄積のためにこのISEAのようなカルチャースクールにも通うし、試飲会があれば疲れ果てていても夕方の仕事が終わってから出かけるし、また異業種交流会も二つの幹事をしているので、それも企画して出席しなければなりません。貧乏暇なし、貧乏なのにいろいろ費用がかかることばかりするから更に貧乏になる。貧乏が輪廻のよう。
異業種交流会もそうですが、やはりテーマを持って人が集まるということは知識の泉に飛び込むようなものです。特にこのカルチャースクールはフランス人が集まっているので、フランス=議論好き、だから前から後ろから、右から左からと私と机を並べている人たちがやりを突くように発言します。問題なのは、彼らは発言の順番待ちというのはなく、好き勝手になのでここは発言無法地地帯化です。そのとき瞬間聖徳太子にでもならない限り、皆の発言を整理して理解することは出来ませんが、それを2,3拾って噛み砕いただけでもこの講義受講料の15ユーロの価値以上のものが得られます。そしてこの講義には試食もありこれがやっぱり一番の楽しみかな。美味しいチョコレートを食べてそれに語るとき、受講中は「私は貝になりたい」だったのが一転して「口には戸は立てられない」になります。
夢路とみこ