[1267]抗生物質

2013年9月26日

抗生物質(こうせいぶっしつ)とは「微生物によって作られ、微生物の発育を阻害する物質」と定義されています。1941年にセルマン・ワクスマンが定義しました。その後、定義は広く解釈され、現在では「微生物の産生物に由来する化学療法剤」をいうようになっています。

人類が最初に発見した抗生物質はアオカビが産出するペニシリン。ペニシリンは1929年、アレクサンダー・フレミングによって発見された世界初の抗生物質です。

ペニシリンは細菌の細胞膜に作用しその活性化を阻害します。真性球菌は増殖しようとしても細胞膜の柔軟性が損なわれているため増殖ができない、あるいは増殖しようにも膜が薄くなっているため破れたりします。結果溶菌を起こし死滅します。この増殖を阻害する原理がペニシリンの大きな特徴で、発見者フレミングはノーベル医学・生理学賞を受賞しました。
抗生物質は、細菌が増殖するのに必要な代謝経路に作用することで細菌にのみ選択的に毒性を示すため、人体に服用する薬として便利に使われてきました。人体への毒性が極めて少ないからです。

しかし、便利に多用してきた結果、それに耐性を持つ細菌が多くなってきたのも事実。細菌だって自分の種を未来に残すため必死なのです。最近問題になっている抗生物質の効かない多剤耐性アシネトバクターによる院内感染はこれからどんどん増えることでしょう。

ところで、抗生物質が効かない新たな細菌が出てきたということで脅威に感じる人も多いと思いますが、多剤耐性アシネトバクターなど抗生物質に耐性がある菌は抗生物質が効かないだけで、消毒薬や殺菌剤が効かないということではありません。今までどおり、手洗いやうがいをすることで、これらの細菌に付入られないよう気をつけていれば、感染することはありません。