[162]読者Q&A『社員が講師をする場合』

■読者からの質問

私の会社Dではある技術の年に数回、講習会を行います。その講習会の講師を雇うのですが、そのことでご相談があります。

その講師Aさんは別の会社Bに属する人で優れた技術を持った人です。そのため、私の会社D以外からも講師の要望があるそうです。今回、金・土・日(金曜日のみ出勤日)に講師をお願いしたところ、金曜日だけは会社Bに有給願をだしてから講師をしてくださるとのことでした。

しかし、私の会社Dの上司から「有給を使って講師をすることは給料の二重取りで本末転倒だ」と指摘され、さらに「土日の講師料もすべてAさんの属する会社に払い込み、会社からAさん本人に払うようにしなければならない」とも言われました。「例えば5万円の講師料を会社Bに振り込んで、そのうち3万円だけ本人に支払われたりもするだろうが、そこまでは依頼する側がタッチすることではない」とも。上司が言うには、AさんはAさんの会社Bに属しているから、講師依頼などもすべて(平日だけでなく、休業日も)会社B宛に依頼をださなければならない」とのこと。本当にそうなのでしょうか。教えて下さい。

■たまごやの回答

『社員が講師をする場合』

お便りありがとうございます。例によってアバウトに答えさせていただきます。
行動を起こす時には関係省庁の窓口にてご確認ください。

お尋ねの件ですが、これは講師を派遣する会社Bの考え方次第です。世の中では会社が社員を講師として派遣することを禁止している場合もあります。しかしお話の具合では、会社Bは特に社員が他社で講師をすることを禁止していないようなので、その場合はどういう契約になるのかが問題となります。

「社員が講師をすることを許可しているが、その場合は会社の仕事として派遣する」場合

この場合は、通常勤務であり出張にあたりますので、講師契約は会社Bと取り決めることになります。したがって、講師料をいくらにするかは会社Bとの交渉になり、その会社Bが講師にいくら払うかは関知しないところとなります。通常は賃金+出張手当くらいでしょう。この場合Aさんは「出勤」にあたりますので有給休暇の論議はあてはまりません。この取り決めになっている場合は「上司」さんの言うとおりになります。

「社員が講師をすることを許可しており、その場合は会社は関知せず、個人の責任において行なう」場合

この場合は、講師Aさんが自分の休みを使って、自分の責任において会社Dで講師を行なうことになります。契約は会社DとAさんとの取り決めなので、報酬は会社DからAさんに直接支払われます。この場合、Aさんが年次有給休暇を使うかどうかはAさんの意志によります。会社BはAさんが有給休暇を使うことを妨げることはできません。

したがってこの場合であれば、Aさんが年次有給休暇をとって会社Bで講師をし、その報酬を受け取ってもなんら問題ないと思われます。給料の二重取りという誹りを受ける覚えはないでしょう。お話の具合から、会社Bはおおらかな会社であり、社員が他社で講師をすることを特に妨げていないようですので、こちらが該当すると思います。この取り決めになっている場合は「上司」さんの言うことは筋が違う、ということになります。

なお、「会社Bでは、自社の社員が他社で講師をすることを禁止してる場合」は微妙です。

そもそも休みを取って(年次有給休暇であっても)その休日に何をしようと個人の勝手です。しかし、その休日に他社で講師をしていることを内緒にしていて、それを会社が知ったら心穏やかでないでしょう。しかも今は企業は自社の技術・ノウハウの流出には非常に敏感です。感情的になって守秘義務違反を問われれば解雇になる可能性もあります。他社で講師をするような場合は、事前に会社に断りを入れるなどの調整は必要かと思います。

2004/07/03(原文)
2006/06/27(加筆修正)