[038]人事異動(3)

 

前回の配置転換や転勤は同一企業内の人事異動ですが、人事権は場合によっては他企業で就業させることもできます。その人事異動の種類は出向と転籍です。これは配転や転勤よりさらに労働者の生活に重要な影響を及ぼすことが多いので、より慎重さが求められます。
 
【出向】
 
出向とは雇用関係は自社そのままですが、勤務地が他社になります。労働の指揮監督は出向先の会社から受けることになります。しかし給与は自社から支払われます。当然就業内容も変わりますので、労働者としては重要な影響を受けることになります。したがって出向については原則としてその労働者の同意が前提となります。
 
出向については事前に労働協約や就業規則に「出向することがある」旨を明記している場合が増えてきていますので、一度確認してみると良いでしょう。就業規則に明記されている場合は、同意が無くても命令できると法律上は判断されます。
 
【転籍】
 
転籍は事実上、自社の退職、そして転籍先会社への就職が同じに行われるものと解釈されます。つまり転職と同じです。これは出向よりさらに労働者にとって重大な影響を及ぼしますので、本人の明確な同意が無い限り許されることではありません。
 
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出向も転籍も、リストラのあおりを最近では激増しています。出向先で取締役として就任するとか、転籍先の社長になるというようなレベルが上がるようなものなら歓迎されるべきですが、実質リストラの一環、首切りとしてなされる場合も少なくありません。出向転籍を命じられたら内容をよく吟味してから返事をするようにしましょう。
 
私の務める会社でも、3年前に出向してきた社員がおりますが、最初2年ということだったのになぜかいまだにいます。出向元は地元の銀行なのですが、考えてみたら銀行にいてもしょうがない時代だし、このままこちらの会社にいたほうが良いとは言えます。
 
出向転籍、悲喜こもごもなようで・・・

[037]人事異動(2)

 

企業は、その業務を遂行するにあたって適正な人事権を持つとされています。しかし人事異動はその労働者の生活に重要な影響を及ぼすことも多いので、使用者は慎重に行使しなければなりません。
 
【配転命令】
 
配転(配置転換)とは勤務地はそのままで、職務内容が変わるもの。当然事業所内での移動が伴います。この場合に注意すべきは、権利の濫用にあたらないか、労働者の職種の限定は無いか、ということです。権利の濫用とは、上司の気まぐれ、単に気に入らないとか、嫌がらせなどです。職種の限定とは、最初に技術職で入社したのに、事務職に回された、などです。
 
【転勤命令】
 
転勤は勤務地の変更を伴いますから、労働者にとっては深刻な問題となりがちです。この場合も上記同様に、権利の濫用がないかどうか、就業場所の限定はないか、などを十分吟味します。
 
【単身赴任】
 
色々と問題になる単身赴任については「社会通念上、甘受すべき程度を著しく超えるとは認められない」という判例があって、ほとんど拒否できないし、裁判を起こしても今のところ単身赴任の拒否権は認められません。今のところと申しましたのは、これからは認められる可能性もあるということです。理由は、単身赴任をしていた父親の家庭が崩壊したという実例です。係争中の裁判もあり、今後を期待できます。
 
企業の中でも、先進の企業は社員のやる気を重視しています。単身赴任は社員のやる気を阻害するので、極力単身赴任を刺せない企業も増えてきています。しかし、おおかたの企業は存亡を賭けてそれどころではないですから、まだまだ単身赴任は巾を利かせるのではないかと思います。

[036]人事異動-1-

 

企業のリストラの影響によって、配属が変わる例が多いようです。不要な部署を閉鎖し、新しくIT関連の部署を強化したり。また、不採算店の強化のため転勤があったり。特に株主総会が終わったこの時期は人事異動が多いようですね。人事異動といってもその種類は色々あります。
 
【配置転換】
勤務地は変わらないが、職務内容が変わるもの。
 
【転勤】
勤務地の変更を伴うもの。
 
【出向】
自社に籍は置いたまま、他社に勤めること。
 
【転籍】
自社から勤務先の会社に籍を移して勤めること。
 
下に行くほど、就業環境は変化することになりますが、労働者にとって人事異動は重要な事項となっるため、その扱いは特に慎重を要します。
バブルの時期では企業戦士は会社に言われるままに働いてきました。そのためには家庭を犠牲にすることもありました。しかし、今はいかに人間らしく生きるかが問われる時代です。むやみな転勤は許されません。
 
家庭があり子供が一番父親を必要とした時期に、単身赴任のため家にいられなかった某社の社員が会社を訴えましたね。判決はまだ出ていませんが興味深いところです。法律の解釈の方向では、必要性が無い転勤は無効とする判例があります。さて、どうなりますか。
 
それを受けて早くも転勤を極力無くす方向に向かっている会社も多いです。この背景としては、企業の戦略として、より深い技能を持った人を養成しようとする動きです。今まではどちらかというとオールラウンドな何でもできる人を企業では優先してきました。ところがそれでは他社に勝てない。そこで、より深く技能を持ったスペシャリストを養成する動きです。そのためには勤務地や勤務内容はむやみに変えない方が良いということなのです。
 
尚、期間の定めのある雇用契約の場合は勤務地が明記されています。したがってむやみやたらと転勤は命じることができないのが常識となっています。業務命令としてどうしても転勤させざる得ない時は、その分手当てを上乗せするなどの配慮が必要です。

[035]派遣社員-2-

 

 
【派遣元】、【派遣先】、【派遣社員】について
 
◆雇用関係
 
雇用契約は【派遣元】と【派遣社員】が締結します。雇用契約ですから労働基準法が適用されます。
 
◆請負関係
 
請負契約(派遣契約)は【派遣元】と【派遣先】が締結します。派遣先は派遣元にどう言う人材がほしいかをいって、希望に合った人材を派遣してもらいます。
 
◆業務上の指揮命令
 
業務上の指揮命令は【派遣先】が【派遣社員】に対して行います。
 
■派遣社員からすれば、その労働は極めて特殊な状況に置かれます。労働上の苦情が生じた時に、派遣元も派遣先もそっぽを向くことが横行しました。派遣法は派遣社員を守るために制定されたものです。
 
労働基準法では雇用関係にある派遣元と派遣社員の間に適用されますが、派遣法は労働基準法を補い、派遣先にも派遣元と同じように一定の責任を持たせるものです。つまり派遣先は派遣社員を「いいかげんな使い方をしてはいかん」と、こういうわけです。
 
■派遣社員は労働上に不満があるなどして苦情を申したてる場合は、まず派遣元に申したてます。派遣元はその苦情があったことを派遣先に通知し、その解決に向かって努力しなければならないとしています(派遣法第40条)。
 
派遣元からすれば派遣先はお客様です。苦情があってもなかなかそれ伝えられないという背景があったのではないでしょうか。またそれを受けて、派遣先にもそれを受けるための責任者を置いたり派遣先管理台帳を設けたりすることを義務付けています。
 
■派遣先は契約期間中は正当な理由無く派遣契約を解約することはできません(派遣法27条)。これは労働基準法の解雇にあたる規定と同じくらいきびしいものです。
 
■派遣先は、派遣社員が派遣元と締結している雇用契約の内容を超えて就業させることはできません。派遣先は派遣社員に対して業務上の指揮命令することができますが、その範囲は雇用契約の内容を超える事はできません。もし、契約内容を超えるような就業をさせる時は、派遣社員の同意を得て、あらかじめ延長できる労働時間や就業できる日を決めて派遣契約書に記載する必要があります。
 

[034]派遣社員-1-

 

リストラの波はとどまることを知らないようで、ますます労働者を巡る環境は厳しくなりそうです。労働者としては正しい知識を身につけ、リストラの対象にならないよう、またなってしまったときに如何に対処するかが大切です。
 
もともとリストラとは再構築するという意味ですから、労働者にとっても歓迎すべきことです。時代は急速に変わっていますから、旧態依然とした会社のシステムを改善していくことには労働者といえども異論を挟む筋合いではありません。労働者とて会社が繁栄するのはこの上ない喜びであるはずですから。問題は経費節減のため、何が何でも首を切りたがる会社の体質ということができましょう。
 
さて、利益対経費を明確にするため、人材の内訳を派遣社員に頼る企業が増えてきました。正社員と違って、人件費が明確でしかも専門知識がある派遣社員は、企業にとってこれからの戦力となることは間違いありません。ただここで経営者に誤解が生じやすいのは「派遣社員はいつでも解雇できる」と思っていることです。
 
基本的に「労働法の精神」は社員の区別をしていません。背広を着た正社員であろうと、パートのオバチャンであろうと大学生のアルバイト君であろうと分け隔てなく労働者として扱います。したがって派遣だからという理由で解雇できるわけがないのです。それどころか、優秀な派遣社員は正社員として雇用するようにさえ言っています。つまり派遣社員とは、リストラ(首切り)に便利な社員ではなく、これからの時代を乗り越えるための有用な人材確保システムとして利用すべきもの、と理解する必要があります。
 
◆派遣システム
 
派遣には【派遣元】と【派遣先】があり、【派遣社員】は【派遣元】と雇用契約を結びます。そして【派遣先】の事業主から業務上の指揮命令を受けます。つまり【派遣先】と【派遣労働者】は雇用関係にありません。雇用関係がなければ労働法は適用されないので、その派遣社員を保護するために別に【派遣法】という法律が制定されています。
 
この法律の背景は、派遣先会社が正当な理由なく派遣契約を解除することは、労働法の解雇と同じく厳しく制限する、というものです。ということは、やはり相当数の解約の実例があったのものと推測されます。よく、労働法や派遣法は経営者のことを良くわかっていないとか、労働者ばかり守ってとかいわれますが、これらの法律ができる背景には、事業主の知識の無さやモラルの無さが大きな原因として存在することを、事業主は理解する必要があります。
 
人を雇うということは、その人の一生を左右する重要なことなのです。経営者が自分一人で創業して自分で休み無く働いているうちはいい。しかし、ひとたび人を雇ったなら給料は払わなければならないし、休みは与えなければならない。事業主は雇用に関する法律を勉強すべきであり、それが企業の社会的責任といえるものではないでしょうか?