何らかの原因で交通事故が起こったとしても、その原因を正しく究明することが困難な場合があります。例えば事故当事者の片方が死亡してしまっている、あるいは双方ともに死亡してしまっているなど。
交通事故の場合は保険会社から保険金が支払われますが、事故の過失がどちらにあるのかによって、責任の度合いが違ってきます。そうなると保険金の金額も変わって来ますし、場合によっては刑事責任を問われることになります。
例えば信号機のある交差点内でクルマ同士の衝突事故があり、当事者のどちらかが死亡したとします。この場合、どちらが青信号であったかが重要な判断材料となりますが、生きている当事者に過失があり、じつは信号無視であっても、「そのときは青信号だった」と主張すればそれがまかり通ってしまうとも限りません。死亡してしまった当事者は死人に口無しで自分の無罪を主張できないわけです。
警察で作成した事故鑑定書や裁判が正しいとは限りません。こういうときは遺族は当然納得できませんから、正しい検証と裁判を求めるわけです。その際に活躍するのが「交通事故鑑定人」です。交通事故鑑定人は現場に残された物証を基に科学的な鑑定を行ないます。正しい鑑定は間違った裁判を覆すことも多くあります。
しかし、有能な交通事故鑑定人でも資料が無いと鑑定はできません。もし重大な事故にあった場合はできるだけそのときの証拠を保存するようにしましょう。鑑定に役立つ情報は以下のとおりです。

  • 現場の写真は散乱物を含め、一枚ではなくあらゆる角度から撮影する
  • 相手車や自車をナンバーを含め破損部分を角度を変えて細かく撮影する
  • 事故車両を可能なかぎりそのままの状態で保存する
  • 被害者の衣類や靴など持ち物をできるだけ保存する
  • 事故地点の電柱、看板、街路樹、建物、道路などを撮影しておく
  • 事故時での天候を記録しておく
  • 事故の目撃者を確認しておく。

このような情報が得られれば「事故現場の証拠」に基づいて物理法則、自動車の運動特性、構造特性、人間工学的知識等との整合の下に事故の真相を正しく推論することができます。まさに感情に左右されない交通事故鑑定人の技なのです。
ただし、この鑑定人はアメリカでは確立された資格となっていますが、日本で20人もいないとされます。また遺族の悲しみを食い物にするニセ者の横行しており、つい最近も300万円もの鑑定料を騙し取った人物が逮捕されるという事件もありました。
警察と裁判所による一方的な裁判に対抗できるのは保険会社だけですが、ぜひとも第三者的正しくそして安価に利用できる検証機関が望まれます。
2001/12/24(原文)
2006/07/16(加筆修正)

運転事故の定石―交通事故鑑定人がそっと明かした
渡辺 陽一郎 ベストカー特別取材班
講談社 (2002/10)
売り上げランキング: 244,353

amazonで「交通事故鑑定人」を探す
楽天で「交通事故鑑定人」を探す