第18回-七夕様
こんにちは、稲垣尚美です。すこしさぼってしまって申し訳ありません。
七夕ですね。うちの施設にも七夕飾りが、いろいろ飾られています。
食堂に行く途中にデイサービスがあり、通りすがりに足をとめてそこの七夕飾りの短冊の願いを読んでみました。「健康でいられますように」「足が、もう少し動きますように」「来年も願い事が書けますように」圧倒的に健康を願う短冊が、ほとんどでした。なかには、「もっとお金がほしい」という願い事もありました。なかでも印象に残ったのは、「息子の嫁と弟の嫁の病気が早く治りますように」と、身内の健康を願ったもの。自分の健康を願う短冊よりも切実なものを感じました。
私も何年か前にデイサービスに所属していたことがありました。その時に利用者に同じように短冊に願い事を書いてもらいました。そのなかで今でも覚えているのが、「息子より先に死ねますように」と書いてあった96歳のなおさんの願い事。何人かに願い事を書いてもらいましたが、自分の死を願う短冊というのは、初めて見ました。息子さんも70歳を超えていたと思います。もし息子さんが、亡くなってお嫁さんとお孫さんとの家族になれば、自分の居る空間が、みえない壁で小さくなるのかなといろいろと想像してしました。
「痴呆には、なりたくない」と老後のことをよく心配する声を耳にしますが、私個人の考えでは、終末は痴呆で終わってもいいんじゃないかと思います。自分の存在で周りに迷惑をかけると気がねをして自室から出てこず、家族と交わりもせず、毎日を過ごすよりも痴呆になって家族に迷惑をかけて思いきり、好きなことをして、子どもにもどって終末を過ごす方が、幸せじゃないか、この仕事をして、そう思うようになりました。
2002.07.08