[73]差別用語(下)

2018年8月25日

差別用語も今回が3回目になる。俺が予想していたよりも差別用語はかなり多く、3回目が必要になってしまった。障害者に対する差別用語は前回カバーしたので今回はそれ以外で福祉業界で聞かれる可能性が高いものを紹介していく。
(2)病気など
植物状態・・・植物人間
ハンセン病・・・らい病、かったい
難病・・・業病
植物人間が差別用語というのは驚く人が多いだろう。「かったい」とはハンセン病患者独特の結節の腫れをこう言ったことから始まっている。「業病」は過去の悪行がたたり病にかかっているなど根拠が無い偏見を助長するためだ。
(3)身体的特徴
障害とはでもないし、病気でもないが、特定の身体的特徴を揶揄する差別用語もあるのでここで紹介しよう。
斜視・・・寄り目、藪睨み、がちゃ目、ロンパリ、すがめ(眇め)、ひんがらめ
斜視を表す差別的表現は多い。ロンパリは「ロンドンとパリを両方見るぐらい目が開いている」という意味がある。
円背、猫背・・・せむし(傴、瘻)
円背(えんぱい)は福祉用語でせむしの代わりに良く使われる。ヴィクトル・ユーゴーの名作を描いた「ノートルダムのせむし男」は昔は問題なかったが、今はタイトルが「ノートルダムの鐘」に変更されている。
(3)人種
福祉のテーマとは一見関係がなさそうに思えるが、人種差別に値する言葉も知っておく必要がある。なぜなら福祉業界では人種差別用語も見聞きする事が多いからだ。しかも人種差別用語の入手先は利用者からが多い。差別されている障害者が人種差別するのは皮肉な光景だが、それが現実だ。
韓国人、朝鮮人・・・チョン、チョンコ、半島人、南鮮、北鮮、センチョー、三国人
日本国内で一番多いマイノリティーが在日の韓国人、朝鮮人だろう。彼らの多くは、3世、4世になると日本人化してハングルも話せない。だが、彼らに対する根強い差別意識は未だに健在だ。2ちゃんねるを見ればわかるように公共の電波にできない差別用語がこれでもかと並んでいる。「半島人」「南鮮」「北鮮」がダメなのはかつて日本の占領時代に使われていた用語で占領時代を連想させるためだ。三国人も同様だが、これは某東京都知事が使用して問題になった。彼らにとって日本に占領されていた時代は屈辱の記憶であることを忘れてはならない。「センチョー」は朝鮮を逆から言ったものだ。ある在日系野球選手が自伝で「センチョー」と呼ばれたと語っている。レンズ付きフィルムやコンパクトカメラを意味する「バカチョンカメラ」は「馬鹿でも朝鮮人でも写せるカメラ」という意味なので使わないほうが良いだろう。
文禄・慶長の役(朝鮮出兵)・・・朝鮮征伐
これは豊臣秀吉の1592年、1597年の朝鮮出兵を意味する。征伐というと「悪者を懲らしめる」というニュアンスを含むため、使用を控えるべきとされている。同じように史実ではないらしいが三韓征伐も「三韓出兵」と言い換えたほうがいい。
中国人・・・チャンコロ、シナ(支那)、ニーヤン、三国人、ポコペン
チャンコロの由来はいろいろあり、特定が難しい。「支那」は昔は差別語でも何でもなかった。英語のチャイナの語源になっており、昔の日本文学でもこの呼称はよく見られる。ただ中国人たちを嫌う愚かな人種差別主義者たちが好んで使うために差別用語になっている。メンマのことを意味するシナチク、ラーメンを意味するシナそばも禁忌だ。だが、なぜか東シナ海、南シナ海はそのままで問題ない。
(4)同和用語
同和地区出身者・・・穢多(エタ)、非人(ひにん)、新平民、特殊部落民、部落民
同和地区を知らない人の為に説明すると、中世から江戸時代にかけて宗教的な理由で忌避されていた食肉皮革産業、廃棄物処理、風俗業界、処刑者をしていた人々の子孫、またはその人々が住んでいた地域の出身者のことを指す。穢多(エタ)や非人(ひにん)は完全に差別用語だが、他の新平民、特殊部落民、部落民に関してはそもそも蔑称で使われたわけではなかったためその線引きが難しい。特に部落に関しては集落や地区のことも部落と表現することが今でもあるので差別語とまでは言えないかもしれない。
(5)総括
以上、福祉の現場でよく使われる差別用語をまとめてみた。言うまでもないが、ここで紹介した差別用語はほんの一部にしか過ぎない。職業に関しても蔑称はかなりあるが、今回は割愛した。差別用語を調べてみて、気づくのはあまりにも多くの言葉が差別用語になっている現状である。「落ちこぼれ」「床屋」なども放送では出来るだけ使わないように配慮されている。ここまで来ると単なる行き過ぎか、言葉狩りではないのか?と言いたくなるのは俺だけではなるまい。しかも、言葉は生き物で時代によって放送禁止用語になったりするから厄介だ。
大人であるならば、自分の語る言葉には責任が伴う。知らずに差別用語を言ってしまっても差別用語を使った事実は消せないのだ。これからも教養を深めて、自分が使う言葉がどのような意味を持つのか改めて研鑚を怠らないようにしたい。
エル・ドマドール
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