「知人」と「友人」というのを日本人は使いわけているような気がします。私の場合は、「知人」というと個人的にはそんなに親しくはないものの、たとえば仕事など用があれば声をかけたり、何かお願いできるような間柄で、「友人」というともっと個人的なつながりにまで広がっているような場合です。また、親しくても、あまりにも年齢が上の方や社会的な地位が著しく上の方の場合は「友人」と呼ぶには失礼なような気もして「知人」と呼ぶ場合もあります。
ところが英語の世界に入るとだいたい皆さん「フレンド」と一口に言うので、いわゆる仲良しかと思って気さくに話しをしていたら、何人かを経由しないとアポイントも取れないような、それもとんでもなく偉い人であったり、逆に竹馬の友で仕事には何の関係もなく、ただ食事に同席しているだけということがあります。「フレンド」と紹介されて、どのような態度で接していいのかどぎまぎすることもあります。
私はなぜか弁護士の知人友人が世界中に多いのですが、ある米国の弁護士は米国の著名企業の社内弁護士で、私は会社員の頃その企業の担当をしていました。この人が違う会社へ役員として転職しました。ところがこの企業も私の担当でした。出張でこの企業を訪問した時、会長や社長に「マイ フレンド」と言って自慢げに私の事を紹介してくれたのがとても印象的です。「前の会社の時の担当者」という日本的な表現は正確なのかも知れませんが、あまり味わいがないと思いました。
日本語では異性の友人のことを気軽に「ボーイフレンド」「ガールフレンド」と呼びます。そんなに親しくなくても冗談めかして言うこともありますが、英語では「恋人」のことで、単なるお友達ではありません。日本のくせがついていて「彼はあなたのボーイフレンドか」と聞かれ、ついうなずいてしまう人もいることでしょう。「私にはボーイフレンドがいっぱいいます。」なんて言おうものなら、相手によっては不快に思われるかも知れないのでご注意。
長らく仕事の世界にいると、知人友人のたぐいはほどんど男性になってしまいます。洋の東西を問わず、中には「ボーイフレンド」とすっかり勘違いされている事も多く、人の想像力のたくましさにあきれ果て笑いころげる事もあります。絶対間違われては困るような場合には「ビジネス フレンド」というような表現をよく私は使っています。ビジネスを通じてのお友達というようなニュアンスです。
河口容子
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