景気を映してか、愚痴っぽくなったり、自分のことしか考えられない人が急増しているような気がします。そんな中で昨年末、あらためて知った喜びは「感謝され、感謝すること」でした。
ひとつめは、フィリピンから来たメールです。昨年3月に訪問したソルソゴンという小さな町のバッグメーカーの若いご夫婦からです。私は国際機関の仕事で日本向けの商品づくりのアドバイスをしたり、日本で行う展示会への出展業者の選別を行うのが目的でした。マニラから飛行機で1時間、そして車で2時間かけてたどり着いたのは日本の終戦直後のドラマのセットのような町でした。1週間程度の休暇ならともかく、都会に住み慣れた私には365日ここで過ごすのにはとても自信がありません。奥様は静かで知的な中国系のフィリピン女性で、仕事にかける情熱を淡々と語ってくれました。彼女を何とか日本の展示会に出して勉強させてあげたい、と私は思いました。「もし選ばれても子どもたちが小さいので主人が東京へ行くことになるでしょう。それでも選ばれたらうれしいわ。」無事フィリピン政府機関の審査もパス、6月からの商品展示、7月の商談会には夫婦そろって来日することができ、商談の成果もあがりました。年末のメールには「私たちはあなたの事をずっと忘れません。東京に行けたことも忘れません。また、お会いできたらと心から願っています。」と書いてありました。この仕事がなければ私はこの町を一生知ることもなく、ましてや彼らと知り合うこともなかったでしょう。こんな暖かな出会いを得られた事に思わず感謝しました。
そして、香港のビジネスパートナーの投資家の兄弟です。大晦日の日に私はお礼のメールを書きました。「今年、あなた方と一緒に仕事ができ、お互いを理解し合えたことは大きな喜びです。豊かな発想を与えてもらい、励ましてもらい、支えてもらい、良い思い出や経験をすることができました。」兄からの返事には「まったく同じ気持ちです。あなたの献身と勤勉さにあらためてお礼を言いたいと思います。」弟からは「いつも迅速かつ専門性に富んだ対応とアドバイスに感謝します。あなたのプロ精神は実に素晴らしい。」特に昨年9月からはかつて体験したことのないほどの心身ともにハードな仕事環境でしたが、風邪ひとつひかず乗り越えられたのも、このお互いに感謝し、感謝される喜びがあったからではないでしょうか。
先週は海外とのコミュニケーションは大変だと書きましたが、誠意は絶対通じるものです。通じたら、外国人の方が表現力は豊かですから、日本人より何倍もの感謝やおほめの言葉をいただく事ができます。「意味のある仕事」ないしは「良質の仕事」をした思いでいっぱいになるうれしい瞬間です。
河口容子
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