[065]年末の船積み

 輸出をする者にとって年末の船積みというとせわしなさとともになんだか優越感を感じます。年内必着の貨物で欧米向は航海日数が約 1月もしくはそれ以上ですので12月に入ってからは船積みはしません。税関も年末年始はお休み。アジア向けであっても輸出通関でトラブルを起こさない、書類も万全、スケジュールどおりに貨物をさばけるベテランたちだけが腕を競うかのように登場する季節だからです。輸出の売上は通常 B/L(船荷証券)の日付をもって計上するので、年末を売上とともに過ごせるという誇りもあります。たとえば即納してもらえる商品でなければ正月明けに発注をして 1月中に船積みをするのは至難の技です。そして 2月は短い。 3月決算の会社なら12月に船積みがあるのとないのでは決算まで影響してくるからです。
 経験のない方は、宅配便を大量に遠い所へ送るような感覚でとらえている方もあるでしょうが、輸出の場合、船積書類を細かく正確に作成するという職人芸的な仕事を必要とします。そして世界一厳しい日本の税関による輸出通関もクリアしなければなりません。現在、輸出申告は通関業者にある端末からデータを税関に送って申告します。ある一定の比率で書類審査というのがあり、税関に船積み書類一式を通関士が持参しチェックを受けなければなりません。また、更に現物検査といって輸出貨物の現物をカートンをあけてチェックされることもあります。


問題なく通関できるかどうかは税関と通関業者の信頼関係、そして輸出者との間接的ではありますが税関の信頼関係も必要です。めったに貨物を動かさない業者は書類審査になりますし、カタログや写真だけでは認識しにくい商品の場合は必ず現物検査となります。
 私の会社は日本輸出入者標準コードというのを持っており、このコード番号は税関に登録され輸出入実績はデータで税関に残されます。このデータは日本全国の税関から照会することが可能です。実績のある貨物や輸出者は書類検査、現物検査が減り、税関側もきちんとデータで管理できるという相互の利便性を考えたものです。このコードがない業者の場合、実績のある貨物でも残念ながら毎回書類検査は免れません。
 一方、輸入は年末年始用品の輸入で大変忙しい時期ですが、通関業者の話によると今年は排ガス規制をクリアできない運送会社の倒産、廃業が多く、トラックが確保しづらい、つまり貨物はきちんと港に着いているのに、そこからスムーズに運べないという状況だそうです。こんな所にもたちまちしわ寄せが来るとは想像だにしませんでした。
 また、通関業者が取引先の絞込みを現在やっています。通関業者というのは港湾での作業費や運送費の立替などが多く、支払が遅れたり、支払に不安な客先を持つと自らの倒産につながりかねません。引き受けてくれる通関業者がない、断られたので新たに探さねばならないという話を最近あちこちで聞きます。
 さて、私の貨物は12月23日横浜を出港、27日上海入港。上海の雑踏と買い物を楽しむ中国の人たちを想像しながら私の2003年は無事暮れていきそうです。
河口容子