[075]セキュリティ

 先週はアセアン各国の在日大使や日本の在アセアン大使、各国貿易機関のトップが一同に会するパーティが銀座のホテルで開催されました。小ぢんまりとした高級ホテルですが、1階の玄関から2階のクローク、 3階の会場とノーチェック。パーティが始まる前までは受付で招待状と名刺のチェックが行われていましたが、会が始まったとたん事務局もほとんど不在の状態でした。招待客である知人が私に紹介するために人を呼んでくれていたのですが、彼女は招待客でないにも拘らず自然に会場に押し込まれてしまったとのことです。
 もともと「関係者」の内輪のパーティということもあり名札もなしですが、貿易、投資、観光と出席者のジャンルはまちまちでお互いに顔見知りとは限りません。会場は一事は立錐の余地もなく、料理のありかさえ見えないくらい盛況でしたが、ご時世がご時世だけにセキュリティ上少し不安でした。アセアン諸国には世界一のイスラム教徒数を誇るインドネシアをはじめ、マレーシア、ブルネイとイスラム教国が少なからずありますし、またイスラム過激派の活動しているエリアでもあります。日本を入れて11ケ国集まっていますから、お互いにどこかの国の人と思えばテロリストが混じっていても気がつかないはずで、「テロ対象国」と言われながら、やはりどこか平和ボケののぞく日本です。


 一方、先々週の香港のパーティの方は、会場が香港上海銀行東京支店であったこともあり、銀行の持つセキュリティ機能が完全に働き、夕方でしたから通用口を使い、そこでチェックされ、その先にある受付で招待状と予め用意された名札を交換、やっとエレベーターに乗ることができるという体制でした。参加者も 100名と限定され、共催者である日本香港協会と香港貿易発展局のどちら側の招待客か名札で一目瞭然に識別できるようになっていました。帰りも名札をお返しし、ガードマンの前をひとりずつ外へ出て行きます。合理的な香港人のことですから、おそらく銀行のセキュリティ機能をパーティに利用したのだろうと思いました。「銀行」ですからセキュリティが厳しくても失礼ではありません。
 先月ブルネイに出張したときは、自衛隊の先遣隊のイラク派遣とほぼ時期が重なりましたので、まず私がしたことは日本のエアラインは使わないということでした。まさか、テロリストにハイジャックされたり、撃墜されたりはしないだろうと笑う人もいましたが、リスクが少しでもあれば避けるのが私の方針です。
 出張中私は貴重品はいつでもどこでも持って歩いております。何か起これば、スーツケースはホテルに置いたまま脱出すればいいからです。また往路については仕事で必要な書類(最近はCDに入れていることが多いのですが)はすべて機内に持ち込んでいます。私は経験したことがありませんが、たまに預けたスーツケースが飛行機に乗っていない、違うところへ行ってしまう事故があるからです。その中に書類を入れてしまうと仕事ができなくなる可能性を考えてのことです。消毒薬、目薬、のどスプレー、最近はマスクというのも出張には欠かせません。
 災害や事件にはめったに遭遇するものではありませんが、後悔先に立たず、備えあれば憂いなし、です。
河口容子