[076]異質への理解

 私が貿易に携わってもう28年になります。会社員を辞めた後も貿易コンサルタントの仕事を選んだのは自分の強みとして「外国人と仲良く仕事ができる」というのがあったからです。外国人と話をするのは大好きで、なぜなら私は異文化に興味があり、彼らもまた「異質」を理解しようとするからです。
 Understandというのは理解をするという意味ですが、あなたの言うことや立場は理解できる、というだけで自分が心から賛同するという意味は含まれてはいません。自分とはまったく同じでなくても相手の存在を認める、そしてビジネスにおいてはその違いを良い方向に生かそうという頭が次に働き始めます。
 ところが、日本の場合は異質な人、違う意見を持つ人は仲間はずれにされる傾向があります。ムラ社会、大家族主義の伝統や戦後民主主義のはき違えで何でも多数決あるいは全員一致主義から来るのかも知れませんが、力で他人の意見を押さえつけようとする人、反論する人をなじる人、あるいは人の顔をうかがって黙って得になりそうな方につく人、最悪は何も考えないで支配されているだけの人が結構います。


 目先の損得だけのために同質を装った集団よりも異質を有機的に組みあわせをした方がダイナミックな展開ができるはずです。ある意味では異質を主張し理解してもらうというのは自己責任の世界で、ただ他人にくっついて行くだけや集団に所属しているだけで何とかしてもらえるよりは孤独感もあるかも知れません。
 最近、知人の主宰する勉強会に 2年ぶりくらいに参加しました。もう10数年続いている勉強会です。日本では一回疎遠になるとなかなか交流を再開するのは難しいような気がしますが、この会は主催者のお人柄か何の違和感もなく復帰できるのです。今回は米国駐在から帰ったので 7年ぶりに参加という方もいました。この会のメンバーは20数人ほどで年 3回ほど開催されますが、毎回10人程度出席します。
 このメンバーはIT関係の仕事をしている人が多いものの、業界はまちまちですが、日本の第一線級の国際人がほとんどです。年齢も30代から60代と幅広いものです。TVや新聞に出た、著書を出した、などという知る人ぞ知るという方も多い集団ですが、「他人の話を興味をもって聞き、理解しようとする。他人を上手にほめたり励ます。愚痴をこぼしたり、他人の悪口は言わない。昔の自慢話はしない。自分の仕事につなげようというような目先の損得では参加しない。」人ばかりというのがこの会が長続きしている原因だろうと思います。また、派閥というのもできず、誰とでも等間隔の距離で親しいということも各人が自立した大人であることを感じさせます。相互の異質に対する理解と尊敬により、それぞれがパワーと癒しの両方をもらえる不思議な集団です。
河口容子