[082]日本人の外国語能力

 本来なら今週私はカンボジアにいたかも知れません。 ASEAN中央事務局主催のセミナーがプノンペンで行われ、その講師にどうかと言われたのです。もともと中央官庁の職員が行く予定になっていたのですが、急遽行けなくなり私にお鉢がまわってきたものです。 1月ほど前の話です。テーマ自体は結構こなせる人材が日本にはたくさんいるのですが、英語で 2-3日間セミナーを行えるかというと、とたんにゼロに近くなります。しかも日本と違い ASEAN諸国では講師に対する評価も非常に厳しいので失敗するわけにはいきません。私は東京で別の講演の予定がすでに入っていましたので、お断りしました。しばらくたってお決まりになった方はたぶん準備期間が少なく、さぞ大変だったことだろうと察します。
 こんな事もありました。国際会議でビジネスマンが貿易情報サイトのユーザーの立場から自分で作ったパワーポイントを使って短いプレゼンを行うというものです。 3人必要で 2人は決まったものの最後のひとりが見つからず在日カナダ人が日本代表になってしまったことがあります。
日本では専門知識と語学力は別という体制が根強く残っています。この国際化時代に専門教育なりをどうして英語で行わないのか不思議です。たとえば貿易実務などは日本語で教えられていますが、どうせ英語にして使うわけですから最初から英語で教えればいいわけです。最近はパソコンを英語で教える教室も出てきましたが、SEも英語ができれば活躍する世界がぐんとひろがります。
あいも変わらず語学講座の定番は英語、英会話ですが、その他の外国語はバリエーションがふえてきました。最近、気づいたのですが NHKではテレビ、ラジオともにアラビア語の講座がスタートしています。アルジャジーラのテレビ放送や自衛隊のイラク派遣で関心をもつ人がふえたのかも知れませんが、今回の人質事件などに関してもアラビア語のできる日本人がたくさんいれば、交渉や情報収集ももっと早くできたことと思います。


私自身は語学の勉強は苦手です。ただ、誰しも考えるときは言葉を使って考えます。言語は思想体系だと思うので興味はあります。また、その国々の歴史や文化を知るツールとして外国語の学習に魅かれるものがあります。大学時代は第二外国語はドイツ語、おまけに第三外国語としてフランス語を履修しました。卒業してからはイタリア語も勉強してみました。そうしたらスペイン語も辞書さえあれば何とか簡単なものはわかるようになりました。ヨーロッパにしばらく住めばこれらは一気に開花すると甘い期待をしていますが、まずそのチャンスはなさそうです。
 私にとって現在使う頻度の高そうなのはインドネシア語と中国語ですが、世界一簡単といわれるインドネシア語も始めては途中であきらめるという繰り返しで、今月からは中国語に鞍替えしてみました。毎回毎回いつまで続くやら、という感じですが、おかげで異文化に対するアレルギーは一切ありません。
 英語圏以外の国に行くときは必ず「こんにちは」と「ありがとう」くらいはその国の言葉で言えるように準備して行きます。この二言だけでも人々は微笑みと親近感をもって接してくれます。語学力イコールその人の価値ではありませんが、語学力が足らなければ活躍の場を狭めてしまう時代であることは事実です。
河口容子