[112]パリの香りは上海の香り

 上海税関の発表によると、2004年 1-9月の上海市のフランス向け香水、オーデコロンの輸出額は前年同期比89.2 %増の 420万ドル、化粧品、スキンケア製品などの輸出額は1852万ドル(同200%増)とのことです。すでに世界の化粧品業界の上位30位が中国に進出し販売を行なっており、生産、研究開発拠点としても成長しています。フランスへ輸出する化粧品は加工貿易によるものが多く、日本でもおなじみのフランスの著名ブランドの現地法人の輸出量は上海市浦東区の化粧品輸出のなんと90%を占めているようです。つまり、パリの香りのイメージで高い価格で売られても実はそれは上海の香りなのです。


 香港のビジネスパートナーの兄のほうが、ある日自分のジャケットを脱いで私にブランド名を見せてくれました。イタリアの老舗の高級紳士服ブランドです。淡いグレーとブルーが基調で彼の白い髪にマッチし、細くて手足の長い体型をふんわりと見せています。「さすが上品でいい趣味だと思ったわ。縫製もいいし、高かったでしょう?」趣味の良さをほめられるとうれしいらしく目を細めて「中国製だよ。知人が縫製業界の組合の理事をしているので、プレゼントさ。」日本人は高いブランドものを買えることを自慢する人がたくさんいますが、中国人はだいたい、ただでもらえる身分や何かのメンバーシップに入って特典で安く買えることを自慢します。もちろんそのメンバーになれる基準が高ければ高いほど自慢です。
そして「中国製が安物の粗悪品だなんて昔話だよ。軽工業品に関してはもう世界でトップレベルだよ。」確かに世界の工場は日本、台湾と韓国、そして中国へと役者が交替していても同じ東アジアにあります。これは日本が先輩として役割を果たしたからでもあり、多いに誇りにしてもいいと思うし、今後もライバルではなく、世界最強の共存共栄体制への道を模索すべきでしょう。
世界経済フォーラムから2004年世界都市競争力ランキングが発表されました。対象は世界中の代表的な53都市で、科学技術、マクロ経済環境、公共部門の質に関する指標を合計して算出されるものです。 1位はシンガポール、続いて香港、オスロ、ヘルシンキ、コペン・ハーゲン。台北が11位で東京よりも上です。上海は25位、北京は35位でした。インターネットを英文で検索しても詳細なランキングが調べられなかったのが残念ですが、アジアの都市では東京と上海の間にクアラルンプールが入り、上海と北京の間にはバンコクとニューデリーが入るようです。肝心のパリがどの辺にいるのか知りたかったのですが、日本企業が上海市場をターゲットに開発したキャラクターが日本へも逆輸入されている時代ですから、上海も十分、流行の発信地として力を発揮しつつあります。何よりもこのランキングだけはトップは欧米でなく、アジアの 2都市と言うところが「アジアの時代」、そのパワーとクォリティを十分感じさせてくれます。
河口容子