先週、ある団体で「小口輸入」についてお話をさせていただく機会をいただきました。今回は視点を変えて、サイドビジネスや起業の手段としての小口輸入というテーマです。参加者おひとりずつからいただく名刺のからはまったく想像がつかないほど、いかに多くの方が「輸入」や「輸入商品の小売」に関心を持っておられることに改めて驚きました。素材から高級ブランド品に至るまで日本には輸入品があふれていますし、小売業というのは誰もがお世話になっているわけで一番身近な存在だからでしょう。
私自身はどんな業種であれ、起業するにはいくつかの心構えがあると思います。まず、ある程度の資金を用意できること、そして何らかのスキルやノウハウを持っていること、具体的なプランを持っていること、リスクを取る勇気があること、自分で決断し行動できることです。
ときどき相談を持ちかけられるのは「輸入で起業したいのだが何を扱ったら儲かるか」「○○を輸入して起業したいが方法がまったくわからないし資金もない」という内容です。上記の心構えにあてはめてみていただけるとおわかりでしょうが、単なる興味や希望の段階で事業化へ向けての調査研究が一切なされていません。起業というのは単なる思いつきやアイデアだけではできません。それをいかに実現し、収益を得ていくかが起業であり、これはご本人の資金量や能力、経験、性格、職業観、価値観などによって内容は変わってくるものです。本やセミナーで得るのは考えるヒントであったり、必要とする知識だけです。事業計画案を作れるのはご本人しかいないわけです。
小口輸入がサイドビジネスや起業の手段として有効なのは、海外や輸入商品に興味があったり、英語が得意だったり、貿易実務経験がある、接客が好き、といった自分の得手をどこかで活用でき、差別化をはかれることです。また、店舗を持ったり、会社を設立するには一定のまとまった資金を必要としますが、個人事業主として自分の身の丈にあったビジネス展開も可能です。今は実店舗を持たなくてもネットショップという方法もありますし、トライアルにオークションサイトを利用するということもできます。
小口輸入に興味を示すのは女性が圧倒的に多く、実際に事業として始める方も多いですが、消費財についてこだわりや商品知識が女性のほうがある、消費者としての感覚をより強く持っている、地道な努力や工夫を厭わない、規模よりも質的な満足を大切にする、細かい経費の節減が上手、という傾向にあるからかも知れません。一方、男性は起業というとどうしても一攫千金的なビジネスや規模拡大の夢を持つ方が多いようです。
輸入も起業も理論ではなく経験の積み重ねで成長していくものです。まさに継続は力なり。継続するうちに力がついてくるし、継続できるのも実力です。日本人はよく勉強するし、他人のことを批評したりするのは好きですが、自分のこととして事業計画を立てるのは苦手、行動に移す勇気もなかなかありません。逆に決断と行動は速いものの、日々の努力や工夫ができず早々にギブアップする人もいます。いったん覚悟したらあきらめない粘り強さも必要ですが、ビジネスは相手が人ですから計画どおりに進まなくても淡々としている寛容さも大切です。
小口輸入については昨年の 8月21日号と11月27日号でも取り上げております。ご興味のある方はバックナンバーをご覧ください。
河口容子
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